気がついたら駅前にいた。
 どこをどう歩いたかなんてまったく覚えてなくて。
 でも結構疲れてたんで。
 近くのベンチに腰掛けた。
 しかし・・・ショックだったな。
 父さんと何かしてるくらいは予想してたっていうか。
 そんなのは仕方ないんだとあきらめていたんだけど。
 綾波に嘘つかれるだなんて思ってなかった。
 それくらいなら正直に言ってもらったほうがよかったよなって。
 まぁ、それも嫌って言えば嫌だけれど。
 まだマシだよね。
 われながら綾波のことを信じてたというか。
 そういう可能性が頭の中になかったというか。
 ・・・まったく。
 こんな思いをする羽目になるなんてさ。
 いや、甘えすぎてたのか。
 僕が。

「なにやってんのよ、こんなとこで。」
 そんな声が降ってきた。
 慌てて頭を上げると、アスカがあきれたような目で僕を見下ろしてた。
 まったく運が悪いっていうか。
 こういう状況で会いたい相手じゃないよな。
「どうしたのよ?」
 思わずついてしまったため息をみとがめたのか、少し声に苛立ちが混じっていた。
 下手にごまかすのもまずいよなぁ・・・
「いや、少し嫌なことがあってさ。」
「それで落ち込んでたってわけ?」
「まぁ、そんなとこ。」
「・・・不毛ねぇ。」
 あたってるだけに反論しようがないな。
 悩んでたって意味がないって分かってるんだけどさ。
「ほっといてよ。それより惣流さんは何でこんなとこにいるのさ?」
 あんまり突っ込まれたくないんで話をそらそうとしてみる。
「ちょっとつまんないヤツと付き合ってきたのよ。」
 相変わらずデートか。
 ってそのわりにはずいぶんラフなカッコしてるな。
「・・・何よ?」
「いや、ずいぶん普通の服装だなぁって。」
「別に、どうでもいい相手だったし。」
 さすがにそこまで言われるとかわいそうだよな。
 まぁ、見も知らない相手なんだけど。
「じゃあ、何でデートなんかしたのさ。」
「ヒカリに頼まれたのよ。お姉さんの知り合いだとかなんかで。」
 軽く肩をすくめながらそう言う。
「なるほどね。」
 委員長とは仲良かったもんな。
「大体、服だったらアンタだって制服着てるじゃない。休日だってのに。」
「仕方ないだろ、私服なんて持ってないんだし。」
「はぁ?」
 大げさに驚くアスカ。
 ・・・いや普通驚くか。
「部屋着くらいはあるんだけどさ。外出用のって持ってないんだよねぇ」
「どういうこと?」
「いや、どういうことって言われてもさ。」
 こっちに来るときに荷物はほとんど向こうに置いてったし。
 そもそもが。
「お金ないしね。」
 生活費も綾波に出してもらってるんだよなぁ、実は。
 で、そう言うとアスカはますますあきれたみたいだった。
「・・・アンタってヒモ?」
「何でそんな言葉知ってるのさ。」
「細かいことはどーでもいいわよ。」
「だってしょうがないだろ。中学生がそんなにお金持ってるわけ・・・」
 って綾波はどこからお金もらってるんだ?
 ・・・父さんか。
 まぁ、考えてみれば当然か。
「あれ・・・じゃあアンタ、ネルフから何ももらってないわけ?」
「何もって?」
 ネルフが何くれるって言うんだ・・・
「あたしはパイロットとして給料みたいな感じでもらってるんだけど?」
「そうなの?」
「命張ってるんだから当然じゃない。ボランティアでやってるわけじゃないんだし。」
「そんな話聞いたことないんだけど・・・」
 気にしたこともなかったし。
「アンタねぇ・・・」
 こめかみに手を当てながら首を振る。
「まぁ、いいわ。ちょっとアタシに付き合いなさい。」
「へ?」
「まともな服の一着も買ってあげるわよ。」
「な、何でそういうことになるのさ。」
「同じチルドレンのよしみよ。」
「だからって・・・」
「迷惑?なら無理にとは言わないけど。」
「いや、迷惑って訳じゃ・・・」
「だったらいいじゃない。」
 そう言って軽く笑ったアスカに。
 僕は何も言えなくなってた。


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