「で、早速だけど次の使徒をどうするかって話をしときたいのよね。」
 確かに、次の使徒はすぐ来ちゃうんだけれども。
「その前に聞いておきたいんだけど。」
「ん?何?」
「トウジがどうなったか知ってる?」
 アスカは僕を安心させるように軽く笑った。
「そんなに深刻な顔しなくても大丈夫よ。」
「じゃあ・・・」
「全身打撲で全治一ヶ月。まぁ結構な重傷だけど、前と違ってきちんと完治するって。」
「そうなんだ、よかった。」
 ほっとため息をつく。
 前に比べればずいぶんましだ。
「アンタがギリギリのところで初号機を止めたおかげってとこね。」
「止めたって言うよりは止まってくれたんだろうけどね。」
「どういうことよ?」
 アレは自分の力じゃないって気がする。
「初号機が僕の頼みを聞いてくれたんじゃないかって。」
「・・・」
 アスカは驚いたような目で僕のことを見てる。
「・・・って変だよね、こんな風に思うのって。」
「違うわ。」
「アスカ?」
「前の世界での最後の戦いのとき、感じたのよ。弐号機の中にママがいるって。アタシを護ってくれてるんだって。」
 そこで肩をすくめて。
「ただの錯覚なのかもしれないんだけど、それで、もう一度弐号機にも乗れるようになったし、こっちでも高いシンクロ率を出せるようになったってわけ。」
「そうだったんだ。」
「昔、ファーストが言ってたのよ、心を開かなきゃエヴァは動かせない、って。」
「綾波が?」
 だったら、エヴァに心があるっていうのは僕の思い込みじゃないって事か。
 綾波は多分僕たちなんかよりずっとエヴァのことに詳しいんだろうから。
 それにしても。
 綾波がアスカにそんな忠告みたいなことをしてたなんて。
 二人の仲ってひどく悪いんだろうって思ってたけど。
 アスカが一方的に嫌ってただけだったのかな。
「あの時は何バカなこと言ってるのかって思ったけど、今にして思えばアタシのこと本気で心配してくれてたのかもね。」
 なんかしみじみとそんなこと言ってるし。
「まぁ、そんなわけで前のときよりはずっと上手くエヴァを動かせるんだけど、それでも今度の使徒に勝てる自信はないのよね。」
 前のときも初号機が暴走して勝ったんだしなぁ。
 まぁ、内蔵電源が切れるまではそれなりに戦えてはいたけれど。
「問題はアイツが無駄に頑丈だってことなのよね。N2爆弾の直撃くらって平気な顔してるようなヤツに何やればいいのやら。」
「・・・そういえば、初号機ってどういう風にあの使徒を倒したの?」
「へ、何言ってんの?」
「いや、途中から全然記憶が無くて・・・」
 電源が切れてあせってたとこまでは覚えてるんだけれど。
 その後ってなんかあいまいで。
 気がついたらいつもの病院のベッドの上だったし。
「アタシも後でざっと映像見ただけなんだけど・・・」
 そう前置きしてから一通り話してくれた。

「使徒を、食べたの?」
「そ。それでS2機関を取り込んだとかで凍結状態になったのよ・・・って何で凍結状態になったかって事も知らなかったわけ?」
「いや、だって、理由は教えてもらえなかったし。暴走した直後なんだから仕方ないかって・・・」
「アンタねぇ・・・」
「でもS2機関ってなんなの?」
「んー?簡単にいえば使徒のエネルギー源みたいなもんよ、これがあれば初号機もケーブルなしで動けたはずなのよね、一応。」
「でも、あの後もケーブルからの電源で動いてた気がするんだけど?」
「S2機関を下手に使って何か変なことが起こったらまずいって事じゃない?確かアメリカ支部が消えたのってそれがらみだったはずだし。」
「そうなんだ?・・・って何でそこまで知ってるのさ?」
「まぁ、それなりにね?何も知らないままいいように使われるのも嫌だったし。」
 それでも分からないことの方がずっと多いのよねぇ、って言ってアスカは軽く笑った。
「すごいね、ほんとに・・・」
「何言ってんのよ。それより話を戻すわよ。」
「あの使徒をどうやって倒すか、か。」
 とはいえ。
 やれることなんて限られてるわけで。
「結局接近戦しかないような気がするんだよなぁ。」
 他の武器なんてどうせ通用しないんだろうし。
「だからってプログナイフが通用すると思う?」
「暴走した初号機がやったって言う、相手を切り裂く攻撃が使えればいいんだろうけど・・・」
 ATフィールドごと使徒を切り裂いたって言うし。
「一応、アレもATフィールドの応用じゃないかとは思うんだけど。」
 腕を組ながらつぶやくアスカ。
「アタシも敵に叩きつけるようにATフィールドを使ったことがあるし。」
「そんなこと、できるんだ?」
「案外応用利くのよ。もっとも、下手なことやって怪しまれるのもマズイと思ってほとんど試してないのよねぇ。」
「それでも、一応攻撃には使えるんだよね?」
「まぁね。」
「だったら僕が使徒のATフィールドを中和して、アスカが攻撃するのがいいのかな?」
「そうね、その方がまだ何とかなるかもしれないわ。」
 というところで一応話はまとまったんだけれど。
 暴走したときの初号機の力を自由に使えたら。
 使徒を倒すのなんて簡単なんだろうなってふと思って。
 でも、それじゃあダミーシステムを使った父さんと同じか。
 さすがにあの人と同じにはなりたくないし。
 結局、自分のできる範囲でやるしかないんだよな。


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