エントリープラグの中。
自分でも意外なくらいに懐かしさを覚えてしまう。
かなりの時間をこの中で過ごしてたんだし、当然って言えば当然なんだけれど。
それにしてもなぁ・・・
「シンジ君、どうしたの?」
しみじみしてる僕が気になったのかミサトさんが声をかけてきた。
「別に・・・」
そう、別にどうでもいいことさ。
とりあえずは目の前の使徒を倒せばいい。
他のことなんて、知ったことじゃ・・・ない。
だから。
LCLが注入された時も、エヴァが起動する時もただぼーっとしていた。
ミサトさんやリツコさんはエヴァが動いたことに大騒ぎしてるみたいだけど、僕にとっては動いて当然のことだったし。
ただ、シンクロ率は61.4%らしい。
以前に比べるとずいぶん落ちてるな。
まあ半年のブランクがあるんだし仕方ないのかもしれないけど。
で、地上に射出されて、目の前に第三使徒が立ってる状況で。
「シンジ君、まずは歩くことだけ考えて。」
・・・ぷっ。
思わず笑っちゃったよ。
敵を前にして歩くことからはじめようって?
初めての時は気づかなかったけど、ずいぶん行き当たりばったりだよなぁ・・・
まぁ、暴走するのを前提に考えてたんだろうな、父さんは。
「何がおかしいの?」
ちょっとムッとしたようなリツコさんの声。
「べつに。歩くだけじゃ勝てないでしょって、それだけです。」
「・・・何が言いたいの?」
「武器はどこにあるんですか?」
話を微妙にずらす。
「左肩にプログナイフがあるわ。」
「それだけですか?」
ふぅ、ってため息をついて。
そして一気に初号機を駆け出させた。
「ちょっと!?」
あっちでなんか騒いでるみたいだけど聞く耳持てない。
で、コアをプログナイフで攻撃しようとして・・・そこではじかれるような感覚。
「ATフィールド!?アレがある限り使徒には・・・」
関係ない。
この程度のフィールドなら・・・
「中和してるの!?」
そのままプログナイフを突き立てる。
使徒はよけようとしてたみたいだけど、でも動きが遅すぎた。
最後の足掻きで初号機に絡み付いて自爆しようとしたけど、それもATフィールドで防ぎきったし。
なんか・・・楽勝だったな。
ま、どうでもいいんだけどさ。
初号機から降りるとミサトさんが待ってて。
さっきの戦い方について色々聞かれるかなって思ってたんだけど。
なぜかミサトさんはそのことには触れずに、
「よくやってくれたわ。」
とかそーいったあたりさわりのないことしか言わなかった。
とりあえずは様子見ってことかな?
不審に思わないはずはないし。
ATフィールドまで使っちゃったんだから。
もっとも聞かれたところで答えようがないんだけどさ。
正直に言ったって頭がおかしくなったと思われるのがオチだろうしね。
「それはともかく、着替えありませんか?ぬれちゃって気持ち悪いんですけど。」
僕がそう言うと、ミサトさんはちょっとあきれたような顔をした。
まあ、はじめてエヴァなんかに乗せられた人間の言うセリフじゃないよな。
でも張り付いてやな感じなんだよね。
前の時はそのまま気絶してたから分からなかったんだけどさ。
「ま、まあ、あるにはあるけど、サイズがちょっち大きいかもしれないわねぇ。」
「かまいませんよ、それくらい。この服が乾くまでで良いんですから。」
「そ、そう。それで・・・」
「それで、僕はこれからどうしたら良いんですか?」
「どうしたらって?」
「これでお役ゴメンなんですか?それともこのままこれに乗りつづけなきゃいけないんですか?」
そう言ってエヴァのほうに軽くあごをしゃくる。
「こちらとしては乗りつづけて欲しいわ。」
ミサトさんは少しつらそうだった。
「いいですよ。」
「・・・へ?」
まさか僕があっさりそう言うとは思ってなかったんだろうな。
でも、ここまで来ちゃったら逃げてもしょうがないんだよね・・・
僕がこの後エヴァに乗らなかったとしたらどうなるんだろうってのにも興味はあるんだけれど。
さすがにねぇ。
「で、そうなると僕はここに住むことになるんですよね?」
「ま、まあ、そうなるわね。」
「住むところはどうなるんですか?」
「まだそこまでは決まってないわ。あなたが乗ってくれるかどうかも分からなかったわけだし。」
「それもそうですね。」
「それで・・・そういったことの手続きのあいだに検査を受けておいて欲しいのよ。」
「検査ですか?」
「そうよ。エヴァに乗って戦ったことで神経に負担が来てるかもしれないから。ま、念のためって感じで。」
で、病院に行くことになったんだけど。
あそこって綾波がらみの想い出ばっかりあるんだよな・・・
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