前と同じように、ミサトさんに引き回されて。
 第三新東京市を一望できる丘とかにもつれてかれて。
「ここがあなたの守った街なのよ。」
 とか言われたけどさ。
 あの時は結構感動したんだけどね。
 なんか認められたって気がして。
 でも、今は何の感慨も覚えないなぁ。
 別にこの街をどうこうしたかったわけじゃないし。
 そんなことで誉められてもって感じなんだよね。
 だから、何の反応も見せずにただ夕暮れの空を見てた。
 そんな僕をミサトさんは不思議そうに見てたけど。
 いいさ、どうでも。

 で、そんなこんなでミサトさんのマンションに着いたんだけど。
 ミサトさんの部屋はやっぱり汚かった。
 ビールの空き缶だのコンビニ弁当の箱だの・・・
 よくここまでほっとけるよなって。
「ここ、人間の住むところですか?」
 淡々とそう言ってみると。
「まぁ、ちょーっちよごれてるけどねぇ。」
 これが「ちょっち」ねぇ?
 さすがに何とかしないとなぁ、これは。
 いくら長いこと住む気はなくても、こんな環境で暮らすのはゴメンこうむりたい。
「というわけで掃除します。」
「・・・へ?」
「これはひどすぎますから。」
 そう言い捨てて、さっさと掃除をはじめる。
「あのー?」
 勝手知ったるなんとやら。
 固まっちゃってるミサトさんはほっといてひたすら片付ける。
 ・・・で。
 気づいたら夜中になってた。
 全部屋きれいに片付けちゃったもんな・・・
 われながら何をやっているのやら。
 ミサトさんは手持ち無沙汰だったらしくビールを飲み始めて寝ちゃったし。
 僕もそこらで寝るかな。
 さすがに疲れたし・・・・・・

 次の日。
 転校の手続きをして学校に通うことになった。
 それと、シンクロテストとかエヴァの操縦に関してだとかそういった訓練も始まって。
 ある意味、前の生活に戻ったとも言えるんだけど。
 どっちもどうでも良いことなんだよな。
 学校で親しかったのなんて数えるほどしかいなかったし。
 彼らにしたって僕のことを知らないんだから。
 そういう相手と付き合ってくのは苦痛なだけだって気がするし。
 仲良くなったってそれがどうしたのかって感じだよな。
 どうやったってあの頃のことを思い出してくれたりするわけじゃないんだから。
 だったら誰とも親しくなることないよなぁ。
 それに勉強に関してだって一度はやってるんだしさ。
 そもそもが役には立ちそうにないし。
 一方でエヴァのほうは。
 これは関心の持ちようがないし。
 そもそも訓練してどうこうって話でもないんだよな、シンクロは。
 技術的な部分である程度は左右できるけど、本質的なところはごまかせない。
 それができるんなら、アスカのシンクロ率はあそこまで下がらなかったと思うし。
 そもそも僕のシンクロ率がいきなり40を越えるはずもない。
 パレットガンの使い方とかはそれなりに覚えたほうが良いのかもとか思わないでもないけど。
 所詮はねぇ・・・
 たいして役に立った覚えがないんだよなぁ。
 第一、エヴァの操縦自体、うまくなったところでねぇ・・・
 まぁ、あんまり不真面目にやると怒られて長引くんで、適当に真剣なフリしてやってたけどさ。
 前の僕はよくこんなこと一生懸命やってたよなぁって。
 そんなことを考えてる自分がひどく不健康な気もしたけど。
 それさえもどうでも良くなって。

 そして2週間ほどが過ぎた。
 学校での僕は誰とも積極的には接しないようにしていて。
 おかげで転校したばかりの時にはそれなりに浴びてた注目も今はすっかりなくなって。
 僕はただそこにいるだけの存在になれた。
 まぁ、前のときも最初はこんな感じだったんだよな。
 前のときは臆病だったからで、今はまわりに関心が持てないからって違いはあるけどさ。
 ・・・綾波もこんな気持ちなのかな。
 周囲のことなんてどうでもいいから。
 だから誰とも話をしない。
 誰も見ようとしない。
 目にうつってるのは父さんだけで。
 でも、あんなものでも見てるものがあるっていうのは良いことなのかな?
 僕にはそれすらないんだから。
 なんにしても。
 僕と綾波はクラスで非常に浮いてたと思う。


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