そんな僕だったけど。
でも、ひとつだけ気になってることがあった。
それはトウジのことだ。
僕が転校してきてからトウジはずっと休みつづけていた。
もっとも、それ自体は問題じゃない。
いまさらトウジとあったって何を話したらいいのかわからないし。
問題なのはトウジが休んでる理由のほうだ。
妹さんの世話をするためなのかってこと。
だとしたら「また」怪我をしたって事なんだよな。
前のときはあちこちに吹っ飛ばされたり暴走したりしたから、そうなっても不思議じゃないって言えば不思議じゃなかったんだけど。
今度はあんまり壊さないようにやれたと思ったんだけどな。
所詮、決まってる結果は変えられないって事なのか。
それとも、もっと上手くやればなんとかなったのか。
どっちにしたって面白い結論じゃない。
つまり、僕じゃどうしようもないって事だもんな。
いくら先のことが分かっても、僕にはその知識をどう使えばいいかが考え付かないんだから。
シンクロ率の高さだって同じ事だ。
いくらエヴァを上手に扱えたって、その先がない。
確かに前よりも楽に使徒は倒せた。
でも、それだけだ。
だからって何も変わってないみたいだし。
なら、なるようにしかならないのかもしれないな。
ま、それもいいか。
・・・不思議だな。
こうして無関心になってる自分自身が。
あの時。
この世界で、エヴァに乗ろとした時。
僕は、せめて「あの世界」を回避できたらって思ってたはずなのに。
すぐにそんなことは考えなくなってた。
あんな何もないところは嫌だったはずなのに。
二度とあんな思いはしたくないはずだったのに。
あれ?
「何もない」って。
今も変わらないじゃないか。
僕の事を知らない人達に囲まれて。
何を話すって事もなく。
僕はただ一人でいる。
これじゃ「あの世界」にいるのとどこが違うって言うんだ?
そのことになんとなく気づいてしまってたからなのかな。
ただ自覚してなかっただけで。
だから、僕はどうでも良くなってしまってるんだろうか。
そんなことを考えた翌日。
トウジが2週間ぶりに登校してきて。
ケンスケと話してるのをもれ聞いてやっぱり妹さんが怪我をしたんだって事がわかった。
やっぱり何も変わってないんだな。
どうしようもないのかな、結局。
そんなことを考えてるうちに授業が始まって。
僕あてにメールが着てた。
これは・・・・・・あれか。
『碇君があのロボットのパイロットだというのはホント?』
やっぱり。
ため息をつきながら「YES」って入力しようとして、ふと気になることがあった。
ここで否定したらどうなるんだろう?
僕がエヴァのパイロットだってわからなければ、トウジに殴られることも・・・
って何考えてるんだろうな、僕は。
自分のくだらない考えに苦笑してしまう。
そんなことしたってなんの意味もない。
どうせいつかはばれることなんだしさ。
だったら、わざわざ前と違うことをしてもしょうがないし。
だから「YES」って答えた。
その後に起こった騒ぎは前のとおり。
まぁ、それは適当にごまかしたんだけどさ。
バキッてさ。
放課後に呼び出されてトウジに殴られて。
「すまんなぁ転校生、わいはおまえを殴らなあかん。殴らんと気がすまんのじゃ。」
ってさぁ。
思いっきり殴ってからそれはないと思うんだけどな。
そもそもはっきりした理由も言わないし。
ケンスケが一応フォローをいれてたから理由はわかるんだけどさ。
でもさ。
よく考えたら。
あの時は仕方ないって思っちゃったけどさ。
いきなりエヴァなんかに乗せられて。
きちんと戦えって方が異常だよな。
なのに。
「なんで問答無用で殴られなきゃいけないんだ?」
「なんやて?」
あ、口に出してた。
立ち去りかけたトウジがつかつかと戻ってくる。
で襟首をつかまれてさ。
「どういう意味や?」
「別に・・・ただの愚痴だよ。」
僕が何を考えたかなんて言ったところで意味はないし。
だからめんどくさくなってそう答えた。
当然、トウジは怒り出して。
「なめとんのかぁ!」
って右手を振り上げて・・・
「・・・碇君。」
え、綾波?
なんで?
トウジもあっけに取られたらしい。
右手を所在なげにふらふらと動かしてる。
でも、綾波はそんな雰囲気に気づきもしないように。
「非常召集。行きましょう・・・」
とだけ言った。
あ、そう言えば今日だったんだ、次の使徒は。
直後にサイレンが鳴って。
みんなは避難しなくちゃいけないわけで。
おかげでトウジのほうはなんかうやむやになってしまった。
まぁ、去り際ににらまれたりしたんだけどさ。
仕方ないよなってため息をついて。
ネルフに向かおうとしたら、まだ綾波がそこにいた。
「・・・早く行きましょう。」
って。
あの時は確か先に行っちゃったような気がしたんだけど・・・
記憶違い?
いや、今はそれどころじゃない。
僕は軽く頭を振って、綾波と一緒にネルフに向かった。
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