その翌日。
事後処理も一応終わったらしく。
僕達は第三新東京市に帰ることになった。
実際、使徒は溶岩の中に溶けてったわけで。
残骸から何かを研究するとかも出来ないんだよね。
だからもうここでやる事はほとんどないらしい。
それを言い出したら、僕達には最初っからすることなんてないんだけどさ。
温泉で一泊したっていうのはミサトさんの好意なんだろう、多分。
修学旅行に行けなかった埋め合わせとか。
そんなことを考えたのかもしれない。
そういう意味では本部待機の綾波はちょっとかわいそうだなって思ったりもするけれど。
ともかく。
行きと同じで、エヴァと一緒に輸送機を使うことになって。
輸送機っていっても、居住スペースってのはきちんとあるから。
それなりに快適ではあったんだけど。
今回ちょっと事情が違った。
どういうことかというと、問題はアスカで。
いや、アスカが何かをしてくるとかいうわけじゃなくて。
それなりにミサトさんと話しつつ。
いつもと同じようにちゃんと僕を無視してるんだけれど。
今はミサトさんがいるからそれほど露骨じゃないものの。
きちんと相手にされてないって事には変わりないんだけどさ。
まぁ、アスカのこういう態度には慣れてきてしまって。
最近はそれはそれとして割り切れるようになってきてはいたんだ。
多少寂しくはあるものも事実だけどね。
それで。
取りあえずはこういう状態で落ちつくのかなとか。
そんな風に思っていたんだけど。
今日はなんか微妙な視線を感じるというか。
アスカがこっちに意識を向けてる気がするんだよね。
もっとも、それはひどくかすかなもので。
それもいつもってわけじゃなくて。
たまにって感じなんだけど。
たいして意味のあることじゃないのかもしれないんだけど。
でも今まで完璧に無視されてたわけで。
なんか気になるし、落ちつかないんだよね。
結局の所。
アスカはずっとそのままで。
僕のほうもどうしていいのか分からないし。
おかげでひどく気詰まりな状況だった。
それは、僕達の間にいたミサトさんにも感じ取れたらしく。
おかげでちょっと呼びとめられた。
用件はアスカとケンカでもしたのかって事で。
今までの状態ってある意味ケンカしてるよりタチ悪かった気もするけど。
実際ケンスケにはアスカと仲が悪いのかって聞かれてるし。
それでもお互い険悪なムードになることもなかったし。
それなりに落ち着いた状態に見えてたって事なのかな。
まぁ、ケンカとかそういうことはなかったんで否定してはおいたんだけど。
なんでこうなったかは僕も良くわからないんで。
その場は適当にごまかしておくことにした。
昨日ちょっと話をしたことが関係あるのかもとは思いつつ。
けど、確証もなかったし。
あの話のことに触れるのも気恥ずかしいしね。
それで、家に帰って。
綾波にヤケドのことを心配されたり。
一緒にご飯を作ったり。
ぼーっとしたり。
そんなことをしてるうちに、気分的に落ち着いてきて。
変に気にして機嫌を悪くさせるのもいやだし。
しばらくしたらもとに戻るかもしれないし。
アスカのことはあんまり考えないようにしようとか思ったりしたんだけど。
翌日、軽く顔をそらしつつ。
「おはよう。」
って言ったアスカのおかげで。
僕は結局悩む羽目になった。
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