アスカが挨拶をしてくれるようになったっていっても。
それはただそれだけのことで。
それ以外のところではなにも変わってないとも言えて。
話をするようになったって事もないし。
まぁ、無視されなくなったっていうのは大きいのかもしれないけれど。
でも、アスカの方からそれ以上に距離をせばめてくることはなかったし。
僕は僕で、近づいていくって事もしなかった。
結局のところ、僕はアスカと親しくなるのがこわかった。
正確に言えば仲良くなった後が。
うまくやってけるって未来像がないんだよね。
ケンカばっかしたり。
傷付け合ったり。
思いつくのは最悪の関係ばっかりで。
そんな風になるよりはって思ってしまう。
だけど、よく考えてみたら。
僕の方から話しかけたとしたって、仲良くなれるのかどうかはアヤシイよな。
前はあくまで一緒に住んでたっていうのがあったから。
だから、いやでも話はしたし。
つまりはお互いに選択の余地がなかったわけで。
そうじゃなかったら僕みたいなタイプは最初から相手にはされないんだろうなって。
そんな気はしてるんだよね。
そんなある日。
僕はめずらしくトウジ達とぶらぶら街を歩いていた。
いつもはたいてい綾波が一緒で。
そうするとトウジ達は落ちつかないらしくて。
こうやってぶらつくような雰囲気じゃなくなっちゃってたから。
まっすぐ帰るようなことが多かったんだけど。
今日は綾波がなんかの実験で一日ネルフに行ってて。
それでこうしてるわけなんだけれど。
トウジやケンスケとたわいもないことを話しながらふざけ合うっていうのはやっぱり楽しくて。
綾波のそばにいる時とはまた違った意味で落ちつくんだよね。
そんなこんなで。
本屋で立ち読みしたり。
ゲームセンターに行ったり。
それなりに時間を潰してそろそろ帰ろうかっていう時に。
アスカを見かけて。
それも一人じゃなくて。
高校生くらいの男の人と一緒で。
それは結構ショックな光景だった。
「どないしたんや?」
そんな僕の様子に気付いたのかトウジが声をかけてきて。
「いや、アレって惣流さんだよなって・・・」
そう言葉を濁して指差すと。
トウジはそっちの方を見て。
「惣流のヤツも相変わらずやのぉ。」
ってなんでもない事のように言った。
「相変わらずって?」
「何だ、知らないのか?」
ケンスケが口を挟んできた。
「だから、なんのことさ。」
「惣流がいろんなヤツと付き合ってるって事だよ。」
「・・・そうなんだ?」
かなり意外だった。
「まぁ正確に言うと、付き合ってるっていうのとはちょっと違うのかもしれないんだけどな。」
「帰りにどっか寄ったりとか、休日にどっかいく約束するとか、そんなもんや。」
「ふーん。」
アスカってそういうのはバカにしてたような気がしたんだけど。
というより同年輩の相手なんてしてられなかったんだろう、多分。
それは僕やトウジ達への態度のはしばしから感じられたし。
デートの相手を置き去りにしたって時もそんな感じだった。
加持さんとかと比べてたんだろうと思うけど。
今から考えてみればいい迷惑だったと思いつつ。
「それで、そういう相手って何人くらいいるの?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「さあなぁ?」
「結構人数はいるんじゃないか?もっとも、2度以上誘えるやつはほとんどいないみたいだけど。」
「つまらん相手は次から無視されるらしいで。」
そこらへんは変わってないのかとか思ったり。
「トウジ達は声かけてみたりしたの?」
「惣流のやつと何かするゆうても思いつかんしのぉ。」
「同感だね。ま、被写体としてなら文句はないんだけどな。」
二人らしい答えになんとなく安心してたら。
「しかし、けっこうみんな知ってる話だと思ったんだけどな。」
って意外そうに言われたけど。
アスカに関する話って避けるようにしてたし。
それにアスカが誰と何をしてたって。
僕にはどうでもいい事の・・・はず、なんだよね。
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