「まぁそんなことより・・・」
そう言って意味ありげに僕の方を見るケンスケ。
一体なんなんだ?
「お前の方はどうなってるんだ?」
「どうって・・・なにがさ?」
「別にとぼけんでもええやろ?」
二人してさぁ。
あそこからどう僕につながるって言うんだ?
「綾波のことだよ、あ・や・な・み。」
「へ?」
「だから綾波とのどーせー生活はどうかっちゅうことや。」
そんな恥ずかしいことをこんな場所で言うかな。
思わずあたりを見まわしてしまう。
「なにきょろきょろしとんのや。」
「トウジがいきなりそんな事言うからだろ?」
「そんな大声で言ったわけでもないやろが。」
だからってさぁ・・・
「そんなことよりも問題はシンジがナニをしてるかって事だろ?」
眼鏡をくいっと指で押し上げるケンスケ。
目がすわってるし。
「ナニって・・・何もしてないよ。」
って言ったけど二人とも信じてないみたいだった。
「なぁシンジ。」
そう言って肩に手を乗せてくる。
「俺達ぐらいの年齢の健康な男子がだ、そういう状況で何もしてないなんて信じられるわけないだろう?」
「まったくや。」
そこで腕組んで重々しくうなづかないで欲しいなぁ。
「綾波と一緒の食事。」
「綾波と一緒の風呂。」
「綾波と一緒のベッド。」
って言いながら顔を近づけて来る二人。
「こんな恵まれたシチュエーションで何もしてないっていうのか、お前は?」
いやそんな風に力説されてもね。
それに後の二つはなんなんだ・・・
「だからそういうんじゃないんだよ。」
僕達が一緒に住んでるっていうのは。
同棲とか、そういった恋愛めいたものじゃなくて。
もっと穏やかな。
前に綾波が言ってた『家族』っていうのが一番近いんだろうけど。
だいたい僕には・・・って。
考え込みそうになったので顔を上げると。
「碇君・・・」
「綾波・・・」
とか言いながら手を取り合い見詰め合ってる二人がいた。
いったい何やってるんだか。
どうせ、二人の妄想を実演してるとか、そんなところだろうけど。
あきれて見てると。
「・・・何をしているの。」
突然うしろから声がかけられた。
演技に夢中なトウジは深く考えもせずに。
「お前に正しい同棲生活ゆうのを教えたろ思ってな。」
「・・・同棲ってなに?」
「何言うとんのや・・・って綾波!?」
そう。
いつの間にか僕達のそばに綾波が来ていて。
トウジ達のあやしい行動をじっと見つめていたわけで。
それに気付いた二人は。
「ま、まあくわしくはシンジにでも聞いとくれ。」
「そうそう、俺ちょっと用事があったんだ。」
とか言ってそそくさと立ち去ってしまった。
まぁこの状況で綾波に説明するのがいやなのはわかるけどさ。
残された僕にどうしろって言うんだよ。
「そういえば、もう訓練終わったの?」
とりあえず話をそらしてみる。
「ええ・・・・・・碇君、同棲って?」
やっぱりだめか。
でも綾波がほかの人に聞いて、変な事教えられるよりはましだよな。
とか自分をなぐさめて。
「同棲っていうのは、その、好きあってる人同士で一緒に住むことだよ。」
軽く目をそらし気味にして早口で言いきる。
そうしたら。
「・・・そう。」
って、なんか軽く頬を染めてるような・・・
なんでこんな反応するんだろうとか思いつつ。
少しだけトウジ達を恨みたいような気がした。
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