そのまま誰もなにもしゃべらずに歩きつづけていたんだけれど。
「サードは・・・」
 アスカがふと口を開いた。
 相変わらず僕の方は見ていなかったけれど。
「アンタはなんでエヴァに乗ってるの?」
 なんでそんなことを聞くんだろう?
 最初に思ったのはそんなこと。
 アスカが僕に何かを聞いてくるってことも。
 内容そのものも。
 僕にはただ意外で。
「そう言う惣流さんは?」
 だからこうやって問い返すことしか出来なくて。
 でも、それを聞いたアスカは少し考えてからこう答えてくれた。
「エヴァに乗らなきゃできないコトがあるからよ。」
「自分の力を示すこと?」
 前にアスカが言っていた答え。
「それもないわけじゃないけど・・・正直、そんなのはどうでもいいわ。」
「なら・・・使徒を倒すこと?」
「まあ、そんなとこね。」
 それが目的なの?
 それがアスカの戦う理由なの?
 だったら哀しいよね。
 使徒なんていくら倒しても意味はない。
 それだけは分かってる。
 サードインパクトはやって来るって。
 僕にはいまだにどうやったらアレを防げるのかわからないから。

「で、アンタの理由は?」
 だったら、僕はなんのためにエヴァに乗っているんだろう?
 結局サードインパクトが来るのなら。
 全ては意味がなくなる。
 そう思って投げ出したくなることもあるのに。
 だから。
「・・・なりゆきだよ。」
 それが正直なところなのかもしれない。
「はぁ?・・・そんなんで命かけてるわけ?」
 思わずって感じで振り向いたアスカがあきれたようにそう言った。
「惣流さんじゃないけど、それだけでもないよ?もちろん。」
 軽く肩をすくめて。
「でも一番の理由はそう言うことだよ。別にさ、他人に誉められたいとか自分が満足したいとか、そんなのどうでもいいんだ。」
「だからって・・・」
「ほかに選ぶ道なんてないんだ、僕には。」
 エヴァに乗らないでいる。
 そんなことは僕には考えられないんだ、いまさら。
「だったら、その上で少しはマシになるようにするくらいしかできないから。」
「・・・前向きなんだか後ろ向きなんだかよくわかんない理由ね。」
「そうだね。自分でもそう思うよ。」
 そう言って苦笑いする。
 それを見たアスカは軽く目を見張って。
「アンタは・・・アイツとは違うのよね。」
 ってつぶやいた。
 後半部分はほとんど聞き取れなくて。
 それは多分ひとりごとで。
 だから僕はそれについて触れなかったんだけれど。
 ひどく気にはなった。

 その後。
 僕達はほとんど迷うこと無しにエヴァの格納庫までたどり着いた。
 そこでは父さん達が手動でエヴァの発進準備をしていたりして。
 前はそれに感動してたりもしたけれど。
 でも今はそれを素直に考えられなくて。
 父さんが僕達が来るのを信じてた、なんてとても思えないから。
 だから何らかの確信があったんだろうと思う。
 あんまり考えたくないけど、僕達の行動が監視されてたりするんじゃないかとか。
 そんな気もするんだよね。
 それくらいのことはしてても不思議じゃないし。
 まぁ、それはそれとして。
 取りあえず重要なのは使徒戦のことだったんだけど。
 こっちの方はあっけないくらいに簡単に終わった。
 アスカが作戦を立てて。
 それに従ってあっさりと勝てた。
 もともと前も結構楽だったんだけれど。
 アスカは頼りになるって改めて思わされた。
 それ自体はいい事なんだけれどね。


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