使徒戦から何日かたって。
最近、僕はネルフの休憩室で過ごすことが多くなってた。
原因は綾波で。
綾波の態度はいまだに変わらなかった。
どことなく僕を避けているようで。
でも気付くと必ずそばにいる。
そんな状態がずっと続いていた。
正直、綾波と二人でいると間が持たなくなっていて。
でも綾波とはなれて行動するっていうのも嫌で。
たいてい誰かがいるここに入り浸るようになったわけで。
たとえ知らない人でも、ほかに人がいれば。
なんとなく気まずさがやわらぐ気がして。
これならアスカの時みたいに明確に嫌われたりする方が、まだ気分的には楽なのかもとか。
自虐的なことを考えてみたりもして。
ずいぶん後ろ向きだとも思うんだけど。
ひどく落ちつかない気分なんだよね。
こういうのは。
かっきりと割り切れてくれた方が。
ずっと分かりやすいのに。
そんなある日。
訓練がはやく終わって、僕は一人休憩室でぼーっとしてた。
ほかに誰もいなくて。
珍しいなって思いながら、結局綾波のこととかを考えていたら。
「どうしたんだ、シンジ君?」
そう声をかけられて。
顔を上げたら、加持さんが軽く笑いかけてた。
「あ、今日は、加持さん。」
言ってから自分でも間が抜けてる挨拶だとは思ったけれど。
「ああ・・・しかし、何か悩み事でもあるのかい?」
悩み事だらけっていっても良いけれど。
「まぁ、そんなところです。」
僕がそう答えると加持さんは苦笑して。
「ずいぶん淡々と答えるんだな。」
そう言ってから僕の横に腰掛けた。
「どうだい?俺で良ければ相談に乗るが。」
加持さん・・・か。
前のときはいろいろなことを教えてもらった気がする。
僕は結構この人の意見とか考えとかを支えにしていた部分があって。
父さんに対するとは別の意味であこがれてた。
そうだな。
加持さんに話を聞いてもらうのもいいかも知れない。
「実は・・・最近友達がそっけなくなったっていうか・・・」
でもなんとなくストレートには話しづらくて。
ぼやかしてみたんだけど。
「友達?女の子かい?」
いきなり切り込んでこられたというか。
「ええ・・・まぁ。」
「じゃあレイちゃんかい?」
「・・・なんでそうなるんです?」
「いや、なんとなくな。」
ごまかそうとするだけムダだったってことか。
結局あきらめて素直に話すことにした。
「なにか気に障ることをしたってワケでもないんだろう?」
「思い当たることは別に・・・・」
「まぁ、女性の心っていうのは俺達男には永遠の謎だがな。」
「そうみたいですね。」
「にしたってなんの理由もなくって事はないだろうしな。態度が変わった頃に何かなかったかい?」
何かって言われても・・・・・・
「あ。」
「思い当たることでもあったかい?」
「ええ・・・」
確かトウジ達に、同棲してるとかなんとか冷やかされて。
それが気に障ったのかな。
けど、僕がそう言うと加持さんは。
「なるほどなぁ。」
って楽しそうに笑い出して。
「シンジ君もこれから苦労しそうだな。」
軽く僕の肩を叩いた。
僕にはなにも分からなくて。
ただきょとんとするだけだったんだけれど。
「いったいどう言うことなんです?」
「こういうことは教えてどうこうってものでもないんだけどな・・・」
にしたって。
「まぁ簡単に言うと、だ。今まで気がつかなかったものを意識するようになって戸惑っているだけさ。」
結局僕には何がなんだか分からなかったけど。
「これ以上は自分で考えるんだな。」
とだけ言って、後はそのことには触れてくれなかった。
いったい、なんだって言うんだ・・・
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