その後はなんとなく話が途切れて。
 僕は加持さんと話して余計にわけがわからなくなってたし。
 加持さんは悩んでる僕をなかば楽しそうに見ているだけだった。
 だいたい女の子の気持ちなんて僕にわかるわけないじゃないかとか。
 まして綾波ならなおさらだよとか。
 そんなことを思ったりもしつつ。
 どうにかしないと精神衛生上良くないっていう堂堂巡りが続いていた。
 こういう状態だから助言が欲しいのにさ。
 軽くため息をついて加持さんのほうを見ると。
「しかし、いきなり同棲を始めたって聞いたときはずいぶんなやり手だと思ったんだが。」
 とこれまた楽しそうに返された。
「思ったより普通なんだな?」
「だから、そういうんじゃないんですよ・・・」
 少し疲れたように返す。
 なんでみんなそう来るんだろう・・・
「そりゃあ、シンジ君はそうなんだろうけどな。」
 また含みをもたせた言い方を。
「どういことなのか・・・」
 って言いかけた時に。
 綾波がやってきて。
「よぉ、レイちゃん。もうあがりかい?」
「・・・はい。」
「そうか、じゃあ俺もそろそろ戻るとするか。」
 そう言って加持さんは歩み去ってしまった。
 ・・・はぐらかされた。
 まぁ、綾波がいるところじゃ聞けないからいいんだけどさ。

 で、綾波は黙って僕のほうを見つめてて。
 内心やれやれって思いながら。
「じゃ、帰ろうか?」
 っていつもどおりに声をかけた。
「・・・ええ。」
 こういうところは変わらないんだけど。
 たとえば並んで歩いてる時。
 以前よりも距離が開いてる気がして。
 というか、体が触れないようにしてるのかな?
 料理してる時とかもそうだったような気がする。
 前は全然気にしてなかったのに・・・
 って、加持さんの言ってたことって。
 意識してるってそういうことだったのか?
 まさかね。
 そんなわけないよな。
 もし、綾波が誰かにそういう気持ちを抱いたとしても。
 相手が僕だなんてあるわけがない。
 いや、単に家族としては見れなくなったってことかな?
 家族なら気にしなくてもっていうことはあるんだろうと思うし。
 それなら納得はできるけれど。
 だったらなおさらどうしたら良いんだってところだなぁ・・・
 もしかしたら綾波とも少し距離を置いた方がいいのかもしれないって。
 そんな考えもちらりと浮かんだけど。
 それに僕がたえられるかっていうのは疑問だった。
 なんのかんの言っても僕は綾波に依存している気がするから。
 たとえ今、少し気まずい状況でもね。

 にしても。
 僕自身は綾波のことをどう思っているんだろうって。
 そんなことも思う。
 女の子としてとか、そういう風に見ていないのは確かなんだ。
 最初は気にしてた時もあったんだけど。
 いつの間にかそんな気持ちは消えていた。
 それはアスカにたいしても言えることで。
 前は・・・前の世界では僕は二人を意識してて。
 それでいろいろバカなこともしてたりした。
 それに比べてずいぶん今は落ち着いてるというか、さめている。
 それがいいか悪いかなんてことはどうでも良かったりするけれど。
 どうしてそうなったのかって理由くらいはわかりたい気がする。
 自分のことでこんなこと言ってるのもなんだか間が抜けてるし。
 わかったところで、どうにもならないんだろうけどね。


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