自分で何をやったんだか、はっきりとは分からなかったけれど。
きっちりと使徒は倒せたらしい。
「おかげで助かったわ。」
ってアスカに言われたりもしたんだけれど。
なんか、ATフィールドを全開にした時のことっていまいち記憶があいまいになるんだよね。
で、それをそのまま言ったら。
「・・・なに、それ?」
案の定あきれられた。
でも、馬鹿にされてるって感じは無くて。
アスカとの関係がそれなりに良好なおかげかなぁとも思ったり。
まぁ、それはいいんだけれど。
問題は綾波の方だよな。
いろいろぎこちなくなってるって言うのもあるし。
それに、今回のことも。
エヴァの起動ができないくらいに精神状態が不安定になってるってミサトさんは言ってた。
綾波は、結局父さんと仲良くしてるんだからって。
僕とは関係ないんだって。
それはそれでいい、と。
そんな風に思いかけていたんだけれど。
やっぱり気になってしまう。
何やってるんだろうな、まったく。
とは言っても。
何をどうしたらいいかわからないのは相変わらずなわけで。
やっぱり加持さんに相談する、くらいしか思いつかないんだよなぁ。
しかし、そういう相談ができる相手がほかにいないっていうのもアレだけれど。
まぁ、そこまで仲良くしようとしてなかったっていうのもあるんだけれどさ。
どうしても違和感を感じちゃうんだよね。
最初は懐かしくても、だんだんときつくなる。
前の世界で親しかった相手なら特に。
たとえば、僕の知ってるトウジと、僕を知らないトウジ。
顔も性格も何もかも同じでも。
今のトウジが知らない話題はできないわけで。
結局「それなり」の付き合いをしてくのが一番楽だって事なんだよな。
もっとも、性格とかがわかってる分だけ付き合いやすいっていうのはあるわけで。
トウジやケンスケとはよく話してるのも事実で。
友達って言えば友達なんだろうけれど。
けど、そういう意味で言ったら綾波も同じなんだよな。
むしろ、トウジ達よりもつらい相手のはずなんだけれど。
実際に結構さびしい思いもしたんだけれど。
でもそばにいると、なぜか落ち着けた。
だから一緒にいられた。
そして、守ってあげたいって思っていたんだけれど。
今はそういった気持ちも何もかもわからなくなって来てる。
何をどうしたいのかって事さえも。
「ふぅん、なるほどなぁ。」
僕の話を聞いた加持さんはそう言って軽く苦笑いした。
「それでレイちゃんとケンカしたわけか。」
「ケンカっていうか・・・」
「まぁ、同棲相手が別の女の子のとこに泊まったとなれば怒りもするだろうな。」
「だから、そういうのじゃないって・・・」
「シンジ君は前もそう言ってたが、そう思ってるのは君だけかもしれないだろう?」
綾波が僕をそんな風に見てるって?
悪い冗談だよね。
「そんなことあるわけないじゃないですか。」
「どうしてそう思うんだい?」
「どうしてって・・・」
「こういうことに関しては何が起こったって不思議じゃないからな。」
「そういうものなんでしょうか・・・」
それでも。
きっと、綾波が見てるのは父さんだけだから。
僕はそのおまけみたいなものだろうって。
「ずいぶんと自信がないんだな。」
「自信なんて、持てませんよ。」
ずっと自分が嫌いだった。
結局逃げることしかできなかった自分が。
それは今も変わってないから。
誰かに好きになってもらえるなんて思えない。
「そう自分を低く見ることもないと思うんだが・・・まぁ、すぐには変われるようなことでもないしな。とりあえず本題に戻ろうか。」
「本題って・・・?」
「おいおい、レイちゃんと仲直りしたいんじゃなかったのか?」
「それは、そうですけど。」
「それで、シンジ君はレイちゃんのことをどう思ってるんだい?」
「どう、って・・・」
そんなことを急に言われても。
正直、自分でもはっきりしていない。
好きか嫌いかってことなら好きになるんだろうけれど。
でも、そういう対象には思えない。
やっぱり僕には「綾波」が忘れられないから。
だから。
「家族・・・みたいなものです。」
「ふぅん?」
少し意外そうな顔をされてしまった。
「じゃあ、もう一つ聞いておきたいんだが、シンジ君がショックを受けたのはレイちゃんが碇司令と一緒にいたからかい?それとも嘘をつかれたからかい?」
「どっちかって言われたら嘘をつかれたほうですけど・・・」
綾波と父さんが仲良くやってるのは仕方ないって思ってるし。
嘘っていうのは予想外だけにショックだったんだよね。
そういう意味では、綾波のことを信じていたから。
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