ようやくにして綾波ともアスカとも良好な関係が出来上がって。
 僕としてはそれなりに幸せだったんだけれど。
 そういうのは長く続かないものなんだなぁって。
 どういうことかといえば、トウジが校長室に呼び出されたわけで。
 これはあれなんだろうな。
 トウジがフォースチルドレンに選出されたっていう。
 僕と直接に関係ないところではやっぱり前のとおりに話が動いてるんだな。
 まぁ、それはどうしようもないことなんだろうけれど。
 そうなると、トウジがこの話を受けたら。
 参号機は使徒に侵食されるんだろうから。
 また僕の手でトウジを傷つけなきゃいけなくなるのか。
 あんな想いは二度もしたくない。
 あれ自体はダミーシステムとかのせいにしても。
 僕の乗った初号機が参号機のエントリープラグを握りつぶしたわけで。
 どうしたって自分のせいじゃないだなんて思えない。
 せめて、今回は何とかしなきゃな。
 父さんがダミーシステムを起動させる前に参号機を倒せれば。
 プラグ自体には損傷を与えずにすむかもしれない。
 逆に言えばダミーシステムが起動しちゃったらもうおしまいってことなんだよね。
 まぁ、アスカや綾波と上手く協力できれば何とか押え込めるとは思うんだけど。
 たしかあの時ってバラバラに配置されてた気がするんだよなぁ。
 で、一人ずつやられたんだっけ。
 今から考えると間の抜けた作戦だとも思うけど。
 そうである以上、一人で頑張るしかないのか、結局。
 前のときよりは上手くエヴァを扱えるようになったつもりだし。
 とはいっても一対一で勝てる自信はあんまりないんだけどさ・・・

 そんなことを考えてるうちに放課後になって。
 当然トウジは帰ってこないわけで。
 我ながら白々しいなと思いつつ。
 ケンスケと、何があったんだろうって話をして。
 それで、トウジを待つことにしようってことになって。
 そうなると綾波に一言いっとかないといけなくて。
 綾波はシンクロテストってことでネルフに行かなきゃいけなかったから。
 最近シンクロ率が不安定だったせいできちんと実験ができなかったらしく。
 その反動でかなりの頻度で実験に駆り出されてる。
 普段は僕もついていくんだけれど。
 今日はさすがにね。
 それで綾波にそう言うと。
 ちょっと不機嫌そうな顔をしたんだけれど、案外あっさり納得してくれた。

 で、屋上でケンスケと二人ボーッと待ってたんだけれど。
「なぁ、シンジ、参号機が建造されたって本当なのか?」
 ケンスケが少し思いつめたような様子で聞いてきた。
 内心かなりどきっとしたんだけれど。
「そういう話は聞いたことがないけど・・・」
 少なくともこの世界では、だけれど。
「ぺらぺらしゃべれることじゃないって言うのは分かるけどさ。」
「だからそうじゃなくて、ほんとに知らないんだよ。」
「ほんとかよ?」
「ネルフってそういうことは極端に秘密主義なんだよ。」
 結局あの時だって最後までトウジがフォースチルドレンだって教えてもらえなかった。
 必要じゃないことは教えない。
 必要なことさえ教えてくれない。
 ネルフってそういう組織なんだって。
 最近になってわかっては来たけれど。
 まぁ、一番上に居るのがあの人じゃ仕方ないんだろうけどさ。
「それじゃあ四号機のことも知らないのか?」
 なんか聞いたような覚えもあるけれど・・・
 っていうか前もケンスケから聞いたんじゃなかったっけか。
「四号機があったってことさえ知らないんだけど?」
 それを聞くと少しあきれたような顔になって。
「なんかアメリカで建造中に事故起こして欠番になったらしいぜ?」
「そうなんだ?」
「基地ごと消滅だってさ。親父んとこじゃ大騒ぎだったみたいだよ。」
 そういう事を息子に話しちゃっていいんだろうか。
 ちょっと心配になったりもしたけれど。
「ほんとに何も教えてもらってないんだな。」
「まぁね。けど、なんでいきなりそんなこと聞いてきたのさ?」
「シンジを通して、参号機のパイロットにしてもらえるように頼もうと思ってさ。」
「・・・やめたほうがいいと思うけど?」
 使徒として殲滅されるだけだし。
「でもさ。」
 そもそもが。
「チルドレンになったってろくなことはないよ。」
 きっぱりとそう言いきると。
 何かを感じてくれたのか、ケンスケはそれ以上その話を振ってはこなかった。
 そう、ろくでもないことしか起こらないんだ。
 特にこれから先は。


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