校長室から帰ってきたトウジは、そのことについては何も言わず。
 ケンスケが聞いてもはぐらかすだけだった。
 まぁ、言えるはずも無いんだろうけれど。
 ただ、なんとなく僕の方を意味ありげな視線で見ているような感じではあった。
 気のせいかもしれないけどね。
 結局、適当に遊んで。
 それで何事も無かったように別れたんだけれど。
 僕の方は結構気が重かった。

 翌日の夢見は最悪だった。
 あのときの夢。
 おまけに、エントリープラグを完全に握りつぶすって落ちまでついてた。
 あの時はギリギリのところで止まってくれたんだよな。
 ・・・って何で止まったんだ?
 ダミーシステムは使徒を殲滅することしか考えてなくて。
 そのためにプラグを破壊するつもりだったんだろうに。
 もしかして、僕の呼びかけに応えてくれたんだろうか。
 ダミーシステムじゃなくて、初号機が。
 何度かそう言うことがあったのは事実なんだよな。
 はじめてこの街に来たときとか。
 どことなく僕を守ってくれるような動きをしてた。
 それに、甘えるようにするとシンクロ率が上がるし。
 初号機には何かの意思があって。
 それは僕に好意的なのかもしれない。
 ・・・まぁ、ただの思いつきなんだけどさ。
 そんなことを考えてたせいだろうか。
 綾波がいつもよりちょっとだけ僕のそばに寄ってくれた。
 歩いてるときとか。
 授業時間の合間とかに。
 これは、心配してくれてるんだよな。
 何かを言ったりって事はないんだけど。
 なんとなく分かる。
 それだけで結構気が楽になってるんだから、我ながら現金だよな。

 放課後。
 綾波が見当たらないのでなんとなくボーっとしてると。
「サード、ちょっといい?」
 ってアスカに声をかけられて。
 学校で話し掛けてくるなんて珍しいな。
「別にかまわないけど・・・?」
 で、ここじゃなんだからって事で教室を出て。
 連れてかれた先はなぜか理科実験室だったりしたんだけど。
「何でこんなとこなのさ?」
「別にたいした意味は無いわよ。単に他人に話を聞かれないような場所がよかっただけで。」
「だったら屋上とかでもよかったんじゃ?」
「ファーストと鈴原のやつが話してるみたいだったから、ちょっとね。」
「そうなんだ?」
 何を話してるんだろう?
 考え込んだ僕を見て。
「あんなこと言ってた割には気になるわけ?」
 って楽しそうに聞いてきた。
「少しはね。」
 どういうつもりなのかってことだけどさ。
 綾波はトウジがフォースチルドレンに選ばれたって知ってるんだろうし。
 この時期、わざわざ話をするっていったらその関係なのかな。
 まぁ、そんなことより。
「で、惣流さんの話って?」
「アンタ、参号機の話って知ってる?」
 ・・・何でアスカがこんなことを言い出すんだ?
「ケンスケにちょっとだけ聞いたけど?」
「ちょっとってどのくらい?」
 変に細かいな。
「建造されたらしいって事くらいだよ。それにケンスケもはっきりとしたことは知らないみたいだったし。」
「そう・・・じゃあ鈴原がフォースチルドレンに選出されたって話も知らないのよね。」
 知ってることは知ってるけれど。
 さすがに知らないふりしとかないとな。
「フォースチルドレンって・・・トウジが?」
「そう、参号機パイロットになるらしいわ。」
「何でトウジが選ばれたのさ?」
 そう聞くとアスカは肩をすくめた。
「そこまでは分からないわよ。アタシも知ったばっかりだし。」
「そっか・・・けど、どうして教えてくれるの?」
「知っといた方がいいでしょ、やっぱり。」
「・・・そうだね。」
 何もかも終わった後で知らされるより。
 前もって知った方がまだマシだろうって、そう思う。
 あんなことが起こらなければいつでもかまわないんだけどさ。
 そんな風に考え込んでしまった僕を見て。
 ふと思いついたように。
「アンタ、もしかして・・・」
 ってアスカがつぶやいて。
「なに?」
「あ、うん、なんでもないわ。とりあえず話はそれだけだから。」
「うん、わざわざありがとう。」
 もし僕がなにも知らなかったとしたら。
 やっぱり教えて欲しかったと思うしね。


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