弐号機の一撃を受けた使徒は、兵装ビルをぶち抜きながら吹っ飛んでいった。
「アスカっ。」
 僕が駆け寄ると、弐号機は力尽きたようにその場に腰を落とした。
「・・・ったく、なめんじゃないっての。」
 って言ってるけれどもさすがに息が上がっていた。
「大丈夫?」
「なんとかね・・・って、あれ?」
「どうしたの?」
 って聞いた所でミサトさんからの通信が入ってきた。
『アスカ、今右腕のシンクロを切ったわ。』
 いや、処置は正しいんだろうけれど。
 もう少し早くやってくれればいいのにな、まったく。
「ふぅ、おかげで楽になったわ。」
 そう言ってゆっくりと弐号機を立ち上がらせる。
「さっさと片をつけるわよ、シンジ。」
『・・・アスカ!?』
「・・・って、その状態でまだ戦う気なの?」
「当然でしょ?休むのは使徒を倒してからでいいわよ。」
 きっぱりと言い切る。
 相変わらずやる気に溢れてるなぁ。
 ま、仕方ないか。
 って軽くため息をついたところ。
『使徒から高エネルギー反応!』
 その瞬間。
 ものすごい光と衝撃が僕を襲った。

『シンジ君、大丈夫?』
「・・・・・・ミサトさん?」
 気がつくと瓦礫の中に半分うずもれるようにして横たわっていた。
「よかった、気がついたのね。」
 一瞬、完全に意識が飛んでたらしい。
 顔を上げると、少し離れたところに使徒が浮いている。
 今のは使徒の攻撃、だよな。
 あの一撃も大して効いてないんだろうか。
 いや、顔の部分がかなりひしゃげているし。
 ダメージがないわけじゃなさそうだな。
 ・・・だけど、それよりも。
「アスカは?」
『命に別状はないわ。だけど、まだ意識を失ったままよ。』
 周りを見回すとすぐそばで僕と同じように瓦礫に埋もれていた。
 軽く頭を振って初号機を起き上がらせる。
 どちらにしても、これ以上アスカを戦わせるわけにはいかないし。
 僕が何とかするしかないよな。
「ミサトさん、アスカの回収頼みます。」
 そう言って使徒に向けてダッシュして。
 そのままの勢いで殴りつける。
「くっ。」
 それなりの手ごたえはあるんだけれど。
 効いてるのかどうかはよく分からないな。
 ほとんど使徒を動かせてないし。
 シンクロ率の違いのせいかな、アスカとは威力が違いすぎる気がする。
 って考えてると使徒の腕が飛んでくる。
 迷ってる暇はない、か。
 覚悟を決めてひたすらに連打する。
 同じくらいの手数で使徒の腕が襲ってきたけれど。
 それは無視する。
 というより、よけたりなんだりって気を回してる余裕なんてなくなってた。
 力が欲しい。
 もっと、力が。
 使徒を簡単に倒せるくらいに。
 強く思いながら、ただひたすらに殴りつける。
 そうしていうるうちに不思議な感覚がやってきた。
 ダミープラグを止めたときに感じた感覚。
 初号機の体がまるで自分のもののように感じられる。
 同時に力が溢れてくる。
 どんなことでも出来るような気になる。
 一発一発に確かな手ごたえが感じられて。
 一方で使徒の攻撃なんてまったく気にならない。
 こんなものだったんだ?
 左手で思い切り殴りつけ。
 吹き飛ぶ使徒に向けて右腕を振り下ろす。
 それだけでATフィールドごとざっくりと使徒の体を切り裂けた。
 ATフィールドを応用して作った刃。
 こんなに簡単なことだったなんてね?
 時間がたてばたつほど初号機との一体感が増していく。
 そしてよりいっそう力がみなぎっていく。
「るぅぅおぉぉぉぉぉぉぉぉん。」
 叫びが口から漏れる。
 と、それで気付く。
 エネルギーがが足りない。
 僕の力を維持するのには足りなさ過ぎる。
 どこかにこの餓えをまぎらわせてくれるものは・・・
 ふと見わたした先に、ひくひくとうごめいている使徒があった。
 使徒の体から力を感じる。
 アレを食べれば。
 そうすればこの餓えが満たせる。
 僕は使徒に駆け寄ってその体にかぶりついた。


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