「そう言えば。」
「うん?」
「いくつか教えて欲しい事があるんですけど。」
 量産型エヴァンゲリオンの事とか。
 父さんが何を企んでるのかとか。
「ちょっと長い話になるが、構わないかな?」
「ええ。」
「まず・・・シンジ君はゼーレって名前を聞いた事はあるかい?」
「どこかで聞いたような気もしますけど・・・」
「簡単に言ってしまえば秘密結社の事だよ。ただ、その影響力は全世界に及んでいるし、ネルフの上位組識でもある。」
「ネルフの?」
 そんな組識があるなんて全然知らなかった。
「まぁ、一般的に知れ渡ってるわけでもないからな。」
 そこで表情が少し厳しくなる。
「そして、セカンドインパクトを起こしたのもおそらくこの組識だ。」
「え、でも・・・あれは使徒が・・・」
「全てが彼らの責任だとまで言うつもりはないよ。だが、きっかけを作ったのは多分彼らさ。」
 苦く笑いながら。
「ま、被害を最小限に抑えるためみたいだったがね。」
「・・・」
「活性化した使徒を卵の状態にまで還元して・・・」
 あれ?
 どっかでこんな話を聞いた事がある。
 どこで?
 だれから?
『人間は十八番目の使徒なのよ。』
『エヴァシリーズを全て消滅させるのよ。』
 ・・・ミサト、さん?
『もう一度エヴァに乗りなさい。』
『何のためにここに来たのか、何のためにここにいるのか、今の自分の答えを見つけなさい。』
 血の味の・・・キス。
 僕は・・・こんな事まで忘れてたのか?
 あの時、まわりのことなんてどうでもよかった。
 ミサトさんが何を言ってるかなんて興味もなかった。
 そのせいなのかもしれないけど。
 ミサトさんが言ってくれた事。
 何もできていやしない。
 やり直した今になってさえ。
 ・・・頭が痛い。
「お、おい、シンジ君?どうしたんだ?」
 こんな調子じゃいったいどれだけの事を忘れてるんだ?
「シンジ君、大丈夫か?」
 加持さんに肩をゆすぶられる。
「あ、大丈夫です。ちょっと前の事を思い出しちゃって・・・」
 いきなり頭をおさえてうずくまったら心配もするよなと思いつつ。
「それならいいんだが・・・いったいどんな事を思い出したんだ?」
「加持さんが今話してくれたような事です。」
「どういう事だい?」
「最後の戦いの前にミサトさんが教えてくれてたんです。ほとんど聞き流してたから今まで思い出せもしませんでしたけど。」
 苦く笑う。
「サードインパクトを起こしたのもゼーレなんですね?」
「彼らは人類の補完と呼んでるがね。人類のため、なんかじゃない事は確実だな。」
「ミサトさんはエヴァシリーズを全て倒せばサードインパクトが止められるって言ってましたけど・・・」
「エヴァが彼らの、人類補完計画の根幹にあるのは間違いない。エヴァが無くなれば計画が挫折するだろうっていう気はするな。」
「例えば、今の段階で初号機や弐号機を自爆させてしまったら?」
「使徒がアダムと接触すればサードインパクトが起こる。そうも言われてるわけだしね。まぁ、シンジ君の話を聞く限りそれがすべて真実とも思えないが・・・」
 顎に手を当てて考えるそぶりを見せる。
「だからといって全くのでたらめだと考えるのも危険すぎるだろう。まして、量産型のエヴァは各国で建造中だ。それもどうにかしなきゃいけない。」
 となると。
「使徒を全部倒した上でエヴァシリーズを何とかするしかないって事ですね。」
「そうだな、もっとも俺はそれに関しては力になれそうもないが・・・」
「そっちは何とかしてみます。前のときより条件はいいですから。」
 ・・・自信はないけどね。
「そうか。」
「後は、あの人が・・・父さんが何を考えてるのか、なんですけど・・・」
「もともとは人類補完計画の実行者としてネルフの司令に任命されたはずだよ。」
「そうなんですか・・・」
「ただ、現在は独自の目的で行動している気配があってね。それが何かまでは分からないが、ゼーレからは疑惑を持たれてるみたいだな。」
 うーん。
 綾波はあの人の計画に絡んでるんだろうっていう気はするんだけれど。
 っていうかほぼ確信なんだけど。
 聞いたからって答えてくれるとも思えないしな。
 とりあえずは目先の事だけ考えてくしかないかな。


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