シンジレイの事情
第4話
なんか・・・ドキドキするな。
女の子と一緒に歩いたりするのがはじめてってわけでもないのに。
むしろ回数的には多い方だと思うし。
中学の頃も帰りが遅くなった女の子を送ったりとかしてたから。
でも、その時は何とも思わなかった。
単に義務を果たしてたみたいのものだったし。
だからこんな気持ちになったのははじめてだ。
やっぱり、相手が綾波さんだからかな?
そう、綾波さんの隣を歩いてるからこんな気持ちになるのかもしれない。
僕がはじめて関心を持った女の子。
それじゃあ、僕は綾波さんのことを『好き』なんだろうか?
・・・わからないな。
これが、今僕が感じてる気持ちが『好き』ってことなのか、僕にはわからないんだ。
◇ ◇ ◇
・・・・・・むぅ、気まずい。
碇君ってば、なんか考え事をしてるみたいな感じで押し黙っちゃってるし。
校門を出たあたりからずっとこんな感じなんだもんねぇ。
・・・別に碇君と仲良く話をしたいってわけでもないんだけど。
さすがに、二人っきりって状況でのこの沈黙は重いわ。
かといって何を話せばよいのやら。
碇君のプライベートな部分ってほとんど知らないしなぁ。
・・・・・・ホントの所、碇君ってどんな性格なんだろ?
正直、よくできた優等生ってイメージが表に出ちゃってて、どういった物が好きで、どういった物が嫌いとかそう言った部分がほとんどわからないのよね。
とはいえ、こんな事考えててもしょうがないし。
とりあえずはこの重苦しい状況を打破しないとね。
うーん、無難な所では読書あたりの話題かな?
と。
「そういえばさ・・・」
碇君がふと思い付いたように口を開いた。
「綾波さんは、どうしてクラス委員に立候補したの?」
ふえ?
「・・・どうしてって?」
「いや、クラス委員に立候補する人ってあんまりいないような気がするから。」
「・・・そうかしら?」
碇君も立候補だと思ったんだけど。
自分のことを棚に上げてなに言ってるかな?
「ああいうのって、たいていは立候補者がいなくて推薦とか先生の指名で決まるものじゃない?」
まあ、それはそうかもね。
クラス委員なんて所詮はただの雑用係だし。
誰も好きこのんで面倒を引き受けたりはしないよね。
わたしの場合は『クラス委員』って役職でそれなりの箔を付けときたかったってだけなんだけど。
それに、きちんとこなすとみんなから尊敬の視線で見てもらえるし。
さすがにそれをストレートに言うわけにもいかないけどね。
「・・・そういう碇君はなぜ立候補したの?」
「僕?僕は中学の頃からずっとやってたから。」
そう言って肩をすくめる。
「それで、そういうのには慣れてたし、それに・・・・・・」
「・・・それに?」
「いや、それが理由かな。」
なんか引っかかるけど・・・
◇ ◇ ◇
それに・・・・・・どうせ僕に回ってくるんだしね。
だったら無駄な時間を使わない方がいい。
それなりに面倒ではあるけれど、だからどうって事でもない。
中学で三年間ずっとやってればいやでも慣れるしね。
僕にとってはそれだけのことなんだよな。
「それで、綾波さんは何でなの?」
「わたしは・・・・・そう、碇君と同じような理由。」
「そうなの?」
「ええ、わたしも中学ではずっとクラス委員だったから。」
綾波さんもそうだったのか。
まあ仕事のやり方とか見てて、慣れてるって感じはしてたけど。
「それに、やりたくない人が推薦や指名で押し付けられるのはかわいそうだから。」
「綾波さんはそれでいいの?」
面倒が自分に回ってくるって言うのに。
「・・・自分でやりたいことをしているだけだから。」
・・・どうしてそういうふうに言えるんだろう?
僕は、やらなきゃいけないことだからやっているだけ。
やりたいなんて思ったことは一度もなかったな・・・
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