シンジレイの事情
第11話
結局。
あれからいろいろ考えては見たんだけれど。
今までどおりのことしかできないわけで。
放課後、僕の仕事が終わるまでなんとなく話をして、その後で綾波さんを送るっていう。
話すことにしたってある意味当たりさわりのないことばっかだしなぁ。
きわどい話題になると自分から話をそらしてるし・・・
そんな自分が情けなかったりもしつつ。
でも、綾波さんと話してるだけでそれなりに満足しちゃってる自分ってのもいるんだよな。
だから今の関係を壊すのが怖くて先に踏み出せないわけで。
そんなこんなで悶々としていると、
「碇君、ちょっといい?」
って隣のクラスの娘に呼ばれて。
特に用事もなかったんでついていったら、校庭の端のほうまで引っ張られていって。
まあその辺で大体の予想はついてたんだけど。
やっぱりそこにはおとなしそうな女の子が待ってて。
で、告白されたりしたんだけれども。
本当に一生懸命な感じで。
思いつめてるんだろうなぁっていうのは分かるんだ。
でも、僕としては「ごめん」って言うしかないわけで。
でもそう言ったら黙ったままうつむいちゃって。
・・・・・・沈黙が痛い。
ちょっとこうしてるのも限界だよなって思ったから。
悪いとは思いつつもこの場を立ち去ろうとしたんだけど。
そうしたら、僕が綾波さんと付き合ってるのかって聞かれて。
・・・・・うーん。
「付き合ってる」ってわけじゃないんだけどさぁ・・・
否定するのもちょっとねぇ。
いや、否定したくないってのが正直なところかな。
だから軽く笑うことにしたんだ。
思わせぶりにね。
誤解されるならそれはそれで良いとか思ったし。
綾波さんなら適当にごまかせるだろうしね。
◇ ◇ ◇
ある日のことだった。
校庭の隅にある植え込みの影でうたた寝していたわたしは誰かの話声で目が覚めた。
「・・・・・・・きあってください。」
えっ。
これはひょっとして告白ってやつ?
そーゆーのを立ち聞きするのは悪いよね。
っていっても、ここから動いたりしたら気付かれちゃうし、そしたら雰囲気ぶち壊しだよね。
なんて考えてると、
「・・・ごめん。」
ありゃ。
かわいそうに。
・・・・ん?
どっかで聞いたような声だけど・・・って碇君じゃない!
わたしはあわてて、でも見つからないようにそっちをうかがった。
やっぱり碇君だ。
相手の子は後ろ向いてるからわかんないけど。
「・・・・・・そうですか。」
相手の子はそう言ってうつむいてしまった。
碇君も何も言わずにいる。
こーゆー雰囲気ってやだなあ、と思ってると碇君も耐えられなくなったのか、
「・・・それじゃあ。」
といって立ち去ろうとした。
すると、相手の子が、
「あのっ。碇君って綾波さんと付き合ってるんですか?」
と言い出した。
えっ。
ええーーーっ。
なんで?
どうしてそういうことになるの?
碇君もそう思ったらしく、
「どうしてそんなことを聞くの?」
とたずね返した。
「それは、その、碇君ってこのごろいつも綾波さんと一緒にいるし。それに綾波さんとならお似合いかもなんて思ったから・・・」
それを聞いた碇君は何も答えず、ただ微笑んでいただけだった。
その子はそれを見て、
「・・・・・・わかりました。」
といって立ち去ってしまった。
・・・ってこれは誤解してるのでわ。
うーん。
なんて思ってると、碇君は軽くため息をついてから何気なくこっちの方を見た。
やばっ。
隠れなきゃ。
・・・遅かった。
碇君の目とわたしの目とがしっかりと、
・・・・・・合った。
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