その翌日から。
僕と綾波はなんとなく一緒にいるようになっていた。
前は、学校への行き帰りは一緒でも、教室とかでは少し距離をとってたし。
お互いに話しかけたりもしてなかったんだけれど。
それは別にわざとそうしていたってわけでもなくて。
変にそばに行こうって気もおきなかったっていうか。
綾波のほうから近づいてくることもなかったんだけど。
ただふと気がつくと目の届く所にいるっていう。
そんな感じで。
それが変わってしまったんだけど。
これもそうしようって思ったわけじゃなくて。
そうするのが自然だったというか。
考えてみれば変なんだけど。
でも今は綾波のそばにいたかった。
だから、僕はほとんど四六時中綾波のそばにいる。
おかげで前以上にうわさになってるみたいだった。
ま、そんなことはどうでもいいんだけどさ。
「しかし、シンジさぁ。」
少しあきれたようにケンスケが聞いてくる。
ここは昼休みの屋上で。
今は綾波やトウジと一緒にお昼を食べている。
もともと僕はトウジたちとお弁当を食べていて。
綾波は一人でいたんだけど。
最近になって僕が綾波を誘うようになったんで、こうして一緒にいるようになってる。
もっとも、綾波はほとんど口を開かずにもくもくと食事をしてて。
はじめのうちはトウジたちも居心地悪そうにしてたんだけど。
2、3日もすると慣れてくれたらしくて。
なんとなく穏やかにやっていけたりしてる。
それはともかく。
「なに?」
「前から思ってたんだけどさ。何でシンジと綾波の弁当が同じなんだ?」
「あ・・・」
「そういやそうやのぉ」
お気楽に相づちを打ってくれるトウジ。
正直に答えるとまたどうにかなりそうなんだけど。
変にごまかしたら綾波に悪いよなぁ・・・
「・・・綾波に作ってもらってるんだ。」
「・・・・・・!?」
あ、二人とも唖然としてるし。
綾波は・・・
「・・・・・・」
・・・なんか照れてるみたいだ。
「えーと。」
「ど、どういうことなんだよ?」
「いや、言ったとおりなんだけどさ。」
で、ちらちらと僕と綾波を見比べて。
「信じられない・・・」
「いつの間にそないなことになったんや?」
「なんとなく。」
「「イヤーンな感じ・・・」」
はもって言わなくてもいいと思うんだけどさ。
でもそこで止めてくれて。
それ以上変に追求してこないからいいんだけどさ。
今回もケンスケが話を変えてくれたんだけど。
「それはそうとさ、お前らJAって知ってるか?」
これはこれで問題のある話題で。
まあ、知らないことにしといたほうがいいよな。
「・・・JA?」
「なんやそれ?」
「いや俺も詳しくは知らないんだけどさ。なんでも自衛隊で造ってる巨大ロボットらしいぜ?」
「つーと、エヴァみたいなもんか?」
全然似てなかったけどね。
「だからよく知らないんだって。シンジたちならもうちょっと知ってるかと思ったんだけどなぁ。」
ケンスケのしみじみと残念そうなセリフでこの場は終わったんだけど。
・・・JAか。
たしか暴走するはず。
もっとも僕にはなんにも出来ない。
ミサトさんに任せるしかないんだよなぁ。
自分でどうにも出来ないのが少しもどかしくて。
そう思える自分が少しうれしかったりもした。
でも、JAの件はそれですむと思ってたんだけど。
それから数日後。
実際にJAが暴走してくれて。
それを止めるためにエヴァで出撃しようとした僕に。
綾波がこう言ったんだ。
「大丈夫よ。JAは止まるから。」
いつものように淡々と。
あたりまえの事を言うような口調で。
前もこんなことがあったから。
綾波が僕を安心させるためにこういうことを言ってくれんだと思って。
「ありがとう。」
って言って出撃して。
それで前と同じようにJAは止まってくれたんだけど。
JAから出てきたミサトさんが浮かない顔をしてて。
上手くいったのにどうしてって聞いてみたら。
言葉を濁されて。
何かあったのかなって思って。
それで、綾波の言い方が妙に気になった。
あれは、JAが確実に止まるって。
それを知って言ってるような言葉の気がして。
もしかしたら父さんが何かしてて。
綾波はそれを知ってたんじゃないかって。
そんな風にも思えた。
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