「いいかげん話を戻したいんだけど?」
「・・・そうだね。」
 ここで落ち込んでも仕方ないもんな。
「それで、使徒ってけっきょく何体いるわけ?あと二体来るっていうのは知ってるけど。」
「その後は、一人だけだよ。」
「ふぅん・・・って『一人』?」
「最後の使徒は人間と同じ姿をしてるから・・・」
「どういうことよ?」
 そりゃ戸惑うよな。
「最初はさ、フィフチルドレンとしてネルフに来たんだよね。」
「な、何で使徒がチルドレンになれるわけ。」
「僕にだって分からないよ。実際、少し不思議なところはあったけど、人間じゃないようには見えなかったしね。」
 そう言って肩をすくめる。
「それで、いろいろ話をしたりしてさ、仲良くなったんだ。彼は、カヲル君は優しい人だったし。」
 右手を広げて、じっと手のひらを見つめる。
「なのに・・・・・・僕は、カヲル君を殺したんだ。この手で。」
「・・・っ。」
 隣でアスカが息を呑むのが感じられた。
 ・・・カヲル君。  自分が生きてると人類が滅ぶから。
 殺してくれって、僕に頼んだ。
 僕たちには未来が必要だって。
 でも。
「僕はカヲル君を殺したくなんてなかった。」
「シンジ・・・」
「だから、今度はそんなことをしないでもすむようにカヲル君と話がしたいんだ。」
「だけど、上手く行ったとして、その後そいつをどうするわけ?」
 まがりなりにも使徒を放っておくのかって。
 そういう事なんだろうけど。
「できれば普通に仲良くやってきたいって思ってる。・・・アスカは反対なんだ?」
 そう聞くと少し首をかしげた。
「んー?どんなやつか分からないから、何とも言えないってのが正直なとこね。」
「そっか。」
「まぁ、アンタがそこまで言うんだし、よっぽどのことがない限り反対する気もないけど。」
「アスカ・・・」
「それに、後二体の使徒をどう片づけるかってことを考えないとね。」
「・・・そうだね。」
 前の世界では、次の使徒と戦ってアスカのシンクロ率が限界以下まで落ちこんだんだし。
 それに、その次は綾波が・・・
 どっちもなんとしても避けたかったから。
 アスカがこんな事を言い出したときは一瞬何が起こったのかと思った。
「次の使徒にかんしては前と同じやり方でもいいと思うんだけど。」
「何言ってるんだよ、それじゃあ・・・」
「確かに、アタシだって二度もあんな目にあいたくはないわよ。」
「だったら・・・」
 言いかけた僕をさえぎるように。
「でも、他に手段が思い付かないのよね。あんな高いところに居る相手に何かできると思う?」
「それは。」
 手も足も出ないのは事実なんだけど。
「リツコにいろいろ頼んではいるけど、どれも役に立つレベルにまではいってないみたいだし。あの槍がなんだか知らないけど、使徒を倒すには、あれに頼るしかないのよね。」
「それまでのおとりって事?」
 あの槍はなんか特殊な物みたいだし。
 それなりに苦戦しない事には、父さんがあれを使おうとは思わないのかもしれないけど。
「そんなとこね・・・ってだいじょうぶよ、二度目なんだし、今度は壊れたりしないから。」
 そう言って安心させるように笑うアスカに。
 結局それ以上何も言えなかった。
「それに、むしろその次の方が問題よね。いくらファーストが助かってたって言ってもあの状況じゃ運がよかっただけとしか思えないし。」
 綾波が助かったって?
 ・・・そうか、アスカはあの後の事を知らないんだよな。
 綾波があの時に死んでしまった事も。
 自分の事を「三人目」って言う綾波も。
 地下の水槽に浮いていた綾波のクローンも。
 だけど。
 さすがにこれは言えないよな。
 いくらアスカにでも。
「どうしたのよ?」
 いけない、また考え込んでたか。
「いや、どうやって倒したらいいのかって・・・」
「そうなのよねぇ・・・」
 で、しばらく話し合ってみたんだけど。
 結局いい考えは浮かばなかった。
 高速で動き回る上に侵食までかけてくる使徒にどうすればいいのやら。
 全然見当もつかない状態で。
 だからって諦めるわけにはいかないんだけどさ。
 もう一度、目の前で綾波に自爆されるのは願い下げだし。
 それにアスカの事も。
 何とかもう少し楽に使徒を倒す方法を見つけないと。
 いくら本人がいいって言っても、あの時のアスカを見てた人間としては、ね。


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