「なにボケボケしてんのよ。」
翌日。
いつものように僕の席にやってきたアスカが声をかけてくる。
「・・・眠いんだよ。」
あれから前のこととか何とかいろいろと話し込んじゃって。
いや、話し込むって言うのは正しくないか。
口を開いてた時間っていうのはそんなに多いわけじゃなかったし。
それよりも、なんか意味もなく見つめあったりしてた時間のほうが長いんだよな。
今になって思うと何やってたんだろうって感じだけど。
綾波が目の前にいるっていうだけでうれしくてたまらなくて。
ついつい綾波のほう見ちゃって。
そうすると綾波もこっちを見つめ返してくるから。
しばらくそのままでいて。
っていうのを繰り返してて。
気づいたらすごい時間になってたんだよね。
僕はともかく、訓練のある綾波には悪いことしちゃったな。
「眠いってねぇ・・・にしても、そんな風にのんびりしてるってことはファーストのほうは何とかなったわけ?」
「まぁね。」
あぁ、なんか口がほころんでしまう。
「なによ、気持ち悪いわねぇ・・・ま、機嫌とるのに遅くまでかかったって落ち?」
「綾波が『綾波』だってわかったんだ。」
その一言でアスカが目を見張る。
「それに、僕たちに協力してくれるって。」
「・・・なんかいきなり話が進んでるわね。どういうことだかちゃんと説明してほしいんだけど。」
「わかってるよ。」
そう言って昨日のことをまとめて話す。
「ふーん、つまり、今まではやることがないから司令の命令を聞いてたけど、アンタがサードインパクト防ぐって言うならそれに協力するってこと?」
「そんなとこだね。」
「こういうこと言うのも何なんだけど・・・信用できるの?」
ためらいがちに聞いてくる。
確かにそれももっともな疑問で。
でも。
「信じられると思う・・・根拠なんて何もないけど。」
でも、綾波が僕をだましてるなんてどうしても思えない。
「いまさらなんだけど、アンタ、アイツのことになると理性飛ばしてない?」
「かもね。」
「ま、いいわ。そこまで信じられないけど。」
アンタほど付き合いがあるわけじゃないし、って言って軽く肩をすくめた。
「それより、アイツがアタシ達と『同じ』ならちょっと聞きたいことがあるのよね。」
「なに?」
「サードインパクトの時どこで何してたのかってこと。・・・まぁ、だからどうっていうんじゃないんだけど。」
「それは僕も聞いたんだけどさ、あのあたりのことはほとんど覚えてないって言ってたよ。」
そういうことにして置こうって昨日話したんだよね。
今の綾波は自爆した後のことなんてわからないんだから。
でも、アスカは『二人目』と『三人目』の綾波が別人だって言うのは知らないわけで。
そこら辺を突っ込まれると綾波のクローンのこととかも話さなきゃいけなくなっちゃうから。
思い出せないんだってごまかしておこうって。
「碇君はわたしが怖くないの?」
昨日ふと綾波がつぶやいた言葉。
「どうして?」
「もう一人のわたしに会ったのなら知ってるはずなのに・・・わたしが」
人間じゃないって。
ささやくような、ほとんど聞き取れなかった一言。
かすかに視線を伏せるようにしてる綾波がひどく頼りなげで。
「どうして、そういうこと言うのさ?」
「人は、自分と違うものを受け入れられない生き物だから・・・」
そうかもしれない。
けど。
「違うよ。」
きっぱりと。
「綾波が人間じゃないからどうだっていうのさ?」
そんなの僕には関係ない。
「綾波は・・・綾波だよ?」
そういって軽く抱き寄せる。
なぜかそうしなきゃいけないような気がして。
綾波は一瞬拒むようなそぶりを見せたけど。
でもすぐに力を抜いてくれた。
「もっとも、今まで気づけなかった僕がこんなこといっても説得力ないかもしれないけど。」
「・・・ありが・・・とう。」
っていうやり取りがあって。
僕の場合、カヲル君のこととかあったから。
そういうのはどうでもよくなっちゃってるんだけど。
アスカはそうもいかないだろうな、とも思うし。
さすがに話せないんだよな、こればっかりは。
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