「覚えてないんじゃしょうがないわね・・・」
それで納得してくれたアスカには申し訳ない気もしつつ。
「まぁ、それはそれとしても一度きちんと話はしたいのよね。」
「・・・?」
理由をうながすようにアスカのほうを見ると。
「ファーストとは前回も今回もろくに話してないから。」
と肩をすくめた。
「前回はあたしが一方的にあいつを嫌ってたし、今回は・・・ねぇ?」
と意味ありげに僕のほうを見る。
「なんかあったっけ?」
僕がそう言うと、アスカはかなりあきれたようだった。
「原因はアンタなんだけど?」
「へ?」
「アタシがアンタのこと引っ張りまわすたびにアイツの機嫌が悪くなってたでしょうが。」
「それは、僕の問題で、アスカは関係ないんじゃ?」
「・・・本気で言ってる?」
「え?え?」
アスカは軽くため息をついて。
「そういえば、アンタってそーいうやつよね。」
「何なんだよ、一人で納得しちゃって・・・」
「いい?」
僕の言葉をさえぎるようにびしっと指を突きつけて。
「とりあえず、アイツがアタシにヤキモチを焼いてるって理解しなさい。」
「なんだよ、それ。」
綾波がアスカにヤキモチだなんて。
「そんなわけないじゃないか。」
「好きな相手が自分をほっぽってほかの女の子と遊んでれば誰でもそうなるわよ、普通?。」
「好きって・・・」
誰が?
誰を?
「あのね・・・アイツが『アイツ』だって分かる前ならそれでも納得できるんだけど・・・」
何でいまだにこうなわけ?
とアスカがぼやく。
「だって・・・」
今まで綾波をちゃんと見てくれる人がいなかったから。
そうじゃない僕を大事に思ってくれてるっていうだけの話で。
「・・・普通さ、女の子に優しくされたりしたら、もしかして気があるんじゃないかな、とか思わない?」
突然アスカがそんなことを言い出した。
「そんなこと・・・ないと思うけど。」
「そこが変なのよねぇ・・・そこらの連中なんて、ちょっと話しただけでそういう妄想したりするもんよ?」
なぜかしみじみとそんなことを語りだす。
「こっちに来たばっかのころってそれなりに愛想振りまいてたじゃない?おかげで誤解するやつが大量発生しちゃったのよねぇ。」
「・・・それは自業自得なんじゃ。」
「うっさいわねぇ。とにかくっ。男っていうのはそういう単純なイキモノなのよ。」
いや、そう力いっぱい断言されても。
「でもさ・・・そういう変な期待して、それで実は何とも思われてないていったらバカみたいじゃない?」
「だから、そういう風に冷静に考えたりできないもんなんだけど。」
そこでため息をつく。
「まぁ、いいわ。とりあえずアタシとファーストの仲はそんなによくないんだってことだけ覚えといて。」
どことなく納得できなかったんだけど。
そう言ったアスカが妙に疲れた様子だったので。
それ以上話を蒸し返すのはやめにした。
とはいえ。
気になる。
綾波が僕をどう思っているのか。
僕のことを『好き』なんだろうか。
それで僕と仲良くしてるアスカに嫉妬して。
で、あんなふうに機嫌を悪くしてるって?
・・・なんか信じられない。
綾波が僕をそういうふうに想ってくれるなんて。
でも、なんでだ?
どうして僕はその可能性を切り捨ててるんだ?
アスカが言ってたように、あそこまで優しくされたらうぬぼれたっておかしくないのに。
変にさめてる。
アスカのことにしたってそうだ。
これだけ話をしたり、いろいろ遊びに行ったりしてるっていうのに。
そういう妄想がまったく沸いてこない。
ただの思い込みだったらバカみたいだって?
・・・違う。
ただ怖いだけだ。
好かれて、好きになって。
そんな関係そのものが。
その先に終わりがありそうで。
だから、傷つかなくてすむような距離を無意識に探してる。
なに・・・やってるんだ、僕は。
あの時に決めたんじゃなかったのか。
つらくても他人と触れ合う道を選ぶんだって。
いまさらこんなことで悩んでどうするんだろうね、まったく。
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