結局のところ。
誤解を解くことはできなかったわけで。
なんか、いっそのこと。
『僕の好きなのは綾波なんだよぉ。』
とか言えたら楽なのかも、とかばかなことを考えてもみたり。
まぁ、そんなことができれば世話はないんだけどさ。
と、軽くため息をつくと。
綾波がどことなく気にするような視線を向けてくるんだけど。
でも何も聞いてこなくて。
この微妙な距離感というのがなんともいえずなじめないわけで。
こうして学校に向かって二人で歩いてるとちょっとアレだったりする。
前みたいに自然によりそってくれたころが懐かしいよなぁとか。
そんなことを思いつつ。
アスカを含めて三人で話し合いってどういうことになるんだろうとか考えて。
なんとなく逃げ出したいような気分になった。
で、放課後。
適当な場所もないんで僕たちの家で相談することになって。
三人で一緒に帰ったりしたわけなんだけど。
綾波とアスカはそれほど険悪な様子じゃなくて。
それどころか、アスカの方は好意的とさえいえるような態度だったりして。
それなりに話を振ったりもしてて。
まぁ、今のアスカにとって綾波を嫌う理由はないとか言ってた気がするし。
そういう意味では屈託なく話し掛けるのも別に妙なことじゃないんだけど。
むしろ、僕のほうがよっぽど綾波を避けてる感じなわけで。
なんとなく話しづらいというか。
変に気を使ってしまって。
そんなことを考えて何もできなかったわけなんだけど。
一方、綾波は相変わらず必要最小限の受け答えだけしてるものの。
特にアスカに敵意を持ってる感じじゃなくて。
これってどういうことなんだろうとか思いつつ。
なんか『以前』の、なんとなく三人で一緒にネルフに行ったりしてたときのことを思い出してしみじみとしてみたり。
・・・いや、僕個人としては居心地が悪かったのも事実なんだけどね。
そんなこんなで家に着き。
さっそく作戦会議をはじめたわけなんだけど。
「あの使徒をどうやって倒したらいいのか見当もつかないのよねぇ・・・」
いきなりそこで詰まってしまって。
問題は侵食してくるってとこなんだよね。
攻撃を受けたら終わりっていうのは正直きびしい。
おまけにかなり動きも速かったはずだし。
確かパレットガンとか効かなかったような気もするしなぁ。
そもそもあーいう細い形してる相手にうまく当てられるのかとか。
・・・マイナス要素しかないじゃないか。
この使徒に関しては前と同じやり方を選ぶわけにはいかないってのに。
そう思った矢先。
「・・・零号機をが自爆させれば。」
って綾波が言い出すし。
「だ、だめだよ、そんなの。」
「でも。」
そうすれば勝てる。
綾波がそう言いたいのは分かるんだけどさ。
それじゃ意味がないんだ。
「アタシも反対ね。」
「アスカ?」
「『前』のときは助かったみたいだけど、今回も無事とは限らないじゃない。そんな無茶なことやらせるつもりはないわよ?」
きっぱりと言い切る。
「どうして?あなたはわたしのことを嫌いだと思ってたのに。」
「・・・アンタね。」
頭痛をこらえるような表情で声を絞り出すアスカ。
「好き嫌いで作戦なんか立てるかっての。そもそも、アンタのことはもう嫌いじゃないわよ?。」
真顔でそんなことを言われて、目をぱちくりとさせる綾波。
「それにアンタとは『前』からの長い付き合いだしね。」
と、照れたように言うアスカに。
綾波は少しだけためらってから。
「・・・ありがとう。」
つぶやくようにささやいた。
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