「だったらこうしてみたら?」
ふと何かを思い付いたようにアスカが口を開いた。
「前の時ってATフィールドを張り続けてなきゃいけないからあーいうことになったわけでしょ?」
「・・・ええ。」
「だったらATフィールドで使徒を押え込むのをアタシとかシンジが代わりにやればいいんじゃない?」
「つまり、爆発前に綾波は脱出するってこと?」
「そ。結局、零号機を犠牲にしちゃうっていうのがちょっと後味悪いけど・・・」
そう言って綾波の方をちらりと見る。
「わたしは構わないわ。」
「・・・まぁ、自爆しようって言い出したのはアンタだもんね。」
あっさり言いきった綾波に、アスカはちょっと引き気味になったようだった。
まぁ、アスカにはそういう風には割り切れないんだろうけど。
弐号機の中にはお母さんが居るって感じてるみたいだし。
いや、そういう意味では僕も同じか。
初号機には母さんが宿ってるから。
だから僕とアスカには自分のエヴァを自爆させようっていう発想は出てこないわけで。
というか、自爆しようってこと自体を思わないんだよな。
前から綾波って自分を大事にしないところがあったけど。
自分が死んでも代わりが居るからって、そんな事も言ってたけど。
そういう物じゃないんだって分かって欲しいよなぁ・・・
「・・ンジ、シンジ!」
「・・・へっ?」
「ったく、なにボケボケしてんのよ。」
また、考え込んじゃってたか。
このクセもどうにかしないととは思いつつ。
「で、今言ったやり方でいい?」
「でもさ、そんな器用なことできるのかな・・・?」
それに押さえ切れるのかどうかもちょっとあやしい。
「やるしかないでしょ?」
「・・・いや、それはそうなんだけどさ。」
他に方法が思いつかない以上、少しでもマシなやり方を選ぶのは当たり前なんだけど。
「もちろんできる限りそうならないように努力はするわよ?普通にやって倒せるんならその方がいいし。」
「あくまでも最後の手段・・・か。」
「そーいうこと。それによく考えたらアンタなら使徒を『切れる』んじゃないの?」
「・・・ATフィールドで?」
「あの無駄に頑丈だった使徒もあっさり切り裂いてたじゃない?」
「あれは暴走してた時じゃないか。」
「意識はあったって言ってなかった?」
「そりゃ、少しはね。」
そこで肩をすくめる。
「だけど、かなりぼんやりしてたし。そもそも体が勝手に動くような感じだったから。」
「じゃあ、再現はできないわけ?」
「感覚的にこうすればいいかなっていうのはあるんだけど・・・」
実際にやってみてできるかどうかは分からないわけで。
「ずっと凍結処分だったから練習の仕様も無かったしさ。」
「・・・ちょっと待って。凍結処分って解除されてないのよね?」
「そのはずだけど・・・あ。」
それはつまり出撃できないということで。
「となるとあたしとファーストだけで何とかしなきゃいけないってことよね・・・。」
「まぁ、最悪の場合は無理矢理出撃するしかないか。」
「それはさすがにまずくない?今度こそチルドレンとから降ろされかねないわよ?」
「でもさ・・・」
「大丈夫よ。」
「綾波?」
「今の初号機には碇君しか乗れないから・・・」
「・・・だろうね。」
「どういうことよ?」
「前回、碇君が命令違反した後、何度か初号機の起動実験をしたの。」
その結果、綾波でもダミープラグでも起動には成功しなかった。
「ダミープラグなんてしょせんごまかしだからね。」
何度も母さんをごまかすことなんて出来やしない。
「そっちは分かるけど、何でファーストまで?」
「それは・・・」
「正規パイロットじゃないって意味では綾波もダミープラグも変わらないんだよ。」
言いかけた綾波をさえぎるように口を挟む。
・・・このままだと何かまずい事を言っちゃいそうだったからね。
ほんとのところ、ダミープラグのベースである綾波も一緒に拒絶するようになったってことなんだろうけど。
「要するに、前はそこら辺いいかげんだったからファーストでも起動できたって事?」
「そういうこと。まぁ、何もなければあのままだったんだろうけどね。」
トウジの一件があったから。
「ふぅん・・・ま、だいたい分かったわ。で、話を戻すけど、シンジが多少命令違反してもチルドレンとしての資格を抹消されることはないってわけね。」
「・・・ええ。」
「にしても、必要も無いのに命令違反させるのもアレだし。アタシ達だけでやれるとこまでやってみたほうがいいわね。」
「そうね。」
「僕は別に・・・」
「気持ちは分かるけど。それに、ファーストがやばくなったら凍結解除命令が出るわよ。前回もそうだったでしょ?」
「それってもう手の施しようが無くなってからじゃ・・・」
「だからぁ、もしそうなったら二人がかりで使徒を押え込むんでしょうが。」
「あ・・・そうか。」
「正直、最近の使徒戦ってアンタに負担かけてばっかだしね。」
ここら辺でアタシも何とかしないとね。
アスカはそう言って軽く微笑んだ。
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