一応、方針は決まったってことで。
ついでにこれからのことも話し合おうってことになったんだけど。
そっちに関しては全然進展しなかったというか。
綾波って実はそれほどあの人の計画のことを知らないらしくて。
というか、命令されたことをただやるってスタンスだったらしい。
やってることの意味とか理由とかについては説明されなかったし。
聞いても教えてはもらえなかっただろうってことだったんだけど。
「にしても、一回くらい聞いてみればよかったのに。」
少しあきれ気味にアスカがつぶやいたのももっともだよなぁと思いつつ。
「以前はそういうことに興味がなかったから。」
「そ、それはそうだったのかもしれないけど、今回は?少しは気にならなかったの?」
「急に聞くようになったら変だと思ったから。」
「・・・それはそうかも。」
「でも、なんかの拍子に小耳にはさんだりしたこととかないの?」
すると綾波は少し考え込んだんだけど。
「ごめんなさい・・・特に思い当たらないわ。」
結局、そう答えた。
で、それなら仕方ないってことで今日はお開きになったんだけど。
アスカが帰ったあとで。
「碇司令は誰かに会いたがっているわ。」
綾波がつぶやくように言った。
「・・・綾波?」
「多分、それが、わたしを通して見ている『誰か』」
淡々と言葉を続ける。
「碇司令にとって意味のあるのはきっとその人だけ。」
「まさか、あの人はそのためだけに・・・?」
冗談だろ、って思いつつ。
でも、一方でなぜか納得できてしまうような気がしていた。
誰かに会いたい気持ち。
それは僕にもあったから。
ずっと綾波に会いたかった。
何かを犠牲にすることでかなうなら。
僕もそうしていたかもしれなくて。
だけど。
あの人の考えてることに付き合わなきゃいけない理由は・・・ない。
僕たちはあの人の駒じゃないんだから。
「・・・碇君?」
無意識のうちに右手を握りしめてた僕を心配したのか、綾波が声をかけてくる。
「あ、なんでもないよ。」
そう言って右手の力を抜く。
「それよりさ・・・綾波は、その『誰か』に心当たりはないの?」
「わからないわ。」
綾波にわからないとなると見当も・・・
あれ?
あの人が大事に思ってるなんていったら。
・・・母さん?
なぜそんな考えが浮かんだのか自分でもわからない。
でも、墓参りに行ったときのあの人の様子が。
母さんのことを語るあの人は妙に穏やかだった。
まぁ、根拠としては薄すぎるとも思うんだけど。
なぜか、それが正しいような気がしていた。
だけどどうやって会おうっていうんだろう?
母さんは初号機の中にいるのに。
僕の時みたいにサルベージしようっていうのかな?
いや、そんなことができるんならとっくにやってるか。
それができないから、いろいろ計画してるんだろうけど。
結局のところ。うまくいったのかな?
そもそも、『あの時』あの人は何やってたんだ?
司令部にもいなかった気がするし・・・
そう考えるとサードインパクトを防ごうってつもりはなさそうだよなぁ。
多分、自分の都合で動いてたんだろうけど。
僕のほうに絡んでこなかったってことは、とりあえずは気にしなくてもいいのかもしれないな。
まぁ、まったく無視しちゃうのも問題だとは思うけど。
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