僕が使徒を切り刻んだ直後。
力を使い果たしたかのように零号機が倒れこんできた。
「っと、大丈夫?」
慌てて支える。
「・・・ええ。」
とはいえ、答える声がか細くて。
かなり心配になる。
「早く戻ろう?それにしてもよく頑張ったよね。」
まさか、自力で使徒の侵食を防ぐなんて思わなかった。
「碇君が教えてくれたから・・・」
「へ?」
「わたしに意味があるって。」
そうか・・・それで。
僕の言った事をちゃんと聴いてくれたのか。
思わず、ぎゅっ、て零号機を抱きしめた。
「・・・碇君?」
「本当に・・・よく頑張ったね、綾波。」
綾波はそのまま僕に体を預けるようにしてくれて。
しばらくこのままでいたかったんだけど。
「・・・衆人環視の下で恥ずかしいことやってんじゃないっての。」
あきれた様ないらついた様なそんな感じのアスカの声。
「それもそうだね。」
軽く苦笑いして、それから零号機を支えるように抱えなおす。
「さ、戻ろうか?」
・・・にしても、今回も無茶したからなぁ。
どうなることやら。
で。
また手錠されてあの馬鹿の前に引っ立てられるわけ?
ワンパターンだなぁ。
いや、バラエティに富んでても困るんだけどさ。
「・・・なぜユイの名を呼んだ?」
って、いきなりそれかい。
何を気にしてるのか知らないけど、もう少し考えたほうがいいんじゃないかとか・・・
一応司令なんだしさぁ。
せめて何で命令違反をしたんだ、くらいにすればいいのに。
「答えろ。何を知っている。」
ちょっと黙っていただけなのに、すぐ言葉を荒げて問いを重ねてくる。
まったく。
とはいえ、加持さんから聞いたとはさすがにいえないわけで。
適当にごまかすか。
「僕だって『あの時』居合わせたんだよ?」
そう言うだけでいきなり顔色を変えてくれる。
あ、なんか副司令もだ。
「・・・覚えていたのか。」
しぼり出すような口調。
「思い出したのは最近だけどね。」
まぁ、アレだけ長いこと初号機に乗ってて気づかなかったっていうのも間抜けな話だけど。
「・・・これからどうするつもりだ?」
何が言いたいっていうんだ。
話が全然つながってないんだよ・・・
「どう、ってなんだよ?エヴァに乗って使徒を倒せ、そう言ったのはそっちだろ?」
それだけで終わらせるつもりはないけどさ。
しばらく考えるようなそぶりを見せた後。
「なるほどな・・・ならば、お前の登録を抹消する。以後はどこなりと好きなところにいくがいい。」
なっ!?
相変わらず支離滅裂な発言なんだけど。
まさかそう来るとは。
動揺を押し隠せたのは自分でも不思議なくらいだった。
「いきなりな話だね?」
「命令を聞かぬパイロットなど必要ない。」
初号機には僕しか乗れない以上、こういう展開になるとは思わなかったんだけどな。
考えが甘かったか。
けど、ここでエヴァをおろされるっていうのは・・・
いや、次の使徒はカヲル君か。
もともと説得してみるつもりだったわけだし。
だとしたら、ここでエヴァに乗ることにこだわる必要はないのかもしれないな。
というか、反論したって無駄だろうし。
「・・・乗れって言ったり、降りろって言ったり、ずいぶん勝手だよね?」
でも一応文句は言っとくことにした。
あんまり素直に従っても怪しまれるだろうし。
だけど。
「お前の意見を考慮するつもりはない。」
取り付く島のないお言葉。
いいんだけどさぁ。
何でこう、ぜんぜん会話にならないかなぁ?
今回の一件で愛想が尽き果てたから、かまわないっていえばかまわないんだけど。
それでも切ないものがあるわけで。
何でこうなっちゃったんだろうねぇ・・・
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