落ち込んだ気分のままで家に戻ると。
「遅かったじゃない。」
ってアスカ?
「何でここにいるのさ?」
綾波と二人してお茶飲んでる姿がとても意外だったので。
思わずそう聞いてしまったんだけど。
「あのねぇ、その言い方はないんじゃない?」
むっとした様子でそんな返事が返ってきた。
「あ、ゴメン・・・」
そう答えると。
「碇君・・・だいじょうぶ?」
綾波が心配そうな視線を向けてきてくれた。
「って、何がよ?」
「なにか、悩んでるみたいだから・・・」
アスカは僕のほうを見て、ふむ、ってつぶやいた。
「確かにうじうじしてるわね。」
「ひどい言い方だなぁ・・・」
「アンタね、悩んでも意味ないって悟ったんじゃなかったの?」
「それはそうなんだけど・・・カヲル君に会ってさ・・・」
「へ?どこでアイツと会ったのよ?」
意外そうにそんなことを言う。
「どこって・・・道を歩いてたらカヲル君が声をかけてきたんだけど。」
って。
「それより『アイツ』って?」
なんか知ってる人のことを話す口ぶりなんだけど・・・
「今日顔合わせがあったの。」
僕の戸惑いに気づいたのか、綾波が補足してくれる。
「そうだったんだ。」
「しっかし、ナニ考えてるのかよくわかんないようなヤツだったんだけど・・・アイツってほんとに使徒なの?」
「・・・それは間違いないよ。」
生身でATフィールドを張るなんて真似はヒトにはできないから。
「どうしてあの人は碇君に声をかけたの?」
綾波がぽつりとつぶやいた。
「そー言えばそうよね。今のアンタはチルドレンでもないのに。」
「カヲル君も僕たちと『同じ』なんだってさ。」
あれ?
そういえば何で僕が『そう』だって気付いたんだろう?
「マジ?・・・ったく、いったい何人戻ってきてるのよ・・・」
あきれたようにつぶやく。
「さぁ?」
「ま、いーけど。それよりアイツと何を話したわけ?」
「・・・殺してくれってさ。」
「はぁ?」
「前と同じように、僕に・・・殺してくれって。」
「・・・説得失敗ってわけ?」
「それで・・・僕がいやだって言ったら、『ほかの人に頼むしかないのかな』って・・・」
僕がそういうとアスカは顔をしかめたみたいだった。
「敵にならないってのは助かるけど・・・殺せって言われてはいそうですかってわけにもいかないわよねぇ・・・」
「・・・そうね。」
言葉少なく綾波が同意する。
「それが使徒でも?」
「見かけがアレじゃね・・・それに、まがりなりにも話をした相手をどうこうってやっぱりね・・・」
そう言って、アスカは肩をすくめた。
「ふぅん?」
「って、なに笑ってんのよ。」
「いや、カヲル君が『使徒としてしか見られたことがない』って言ってたんだけど、そうでもないのかなって。」
「んー?それはアタシ達が例外なだけだと思うわよ?アタシの場合は、ほら、アンタからいろいろ聞いてたから。」
「綾波は?」
「・・・わたしには別に関係ないから。」
淡々と。
「ただ碇君の判断を信じるだけ。」
「そ、そうなんだ。」
そう言ってもらえるのはうれしいんだけど。
こうストレートに言われるとアスカの視線が痛い・・・
「ま、結局のところアンタがあいつを説得するしかないんでしょ?」
「・・・そうだね。」
一度失敗したくらいであきらめるわけにはいかないし。
「こんなことは言いたくないし、実際やりたいわけでもないけど、どっちかって話しになったらアタシは迷わないわよ?ここまで来てサードインパクトなんてしゃれにもなんないし。」
きっぱりとした口調だったけど。
それでも、アスカが僕のことを信じてくれてて。
半ば励ますためにこういってくれたんだっていうのが。
なんとなく分かってしまって。
だから。
「・・・分かってる。」
僕は、ただ短くこう答えた。
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