「ふむ、なるほどな。」
そう言って。
加持さんは僕についてる監視を何とかすると約束してくれた。
「とはいえ、だ。俺が君と会ったことは報告されてるだろうからな。監視が厳重にならないうちに行動したほうがいい。」
「カヲル君の事もありますからね。もともとすぐに動くつもりでしたけど・・・」
「なら、今夜だな。さすがに昼は人が多すぎる。」
「分かりました。」
「それまでに、レイちゃんと話でもしておくといい。うまくいったとしても、しばらくは会えなくなるだろうからな。」
「そう・・・ですね。」
けど。
「やめておきます、綾波と話したらきっと決心が鈍るから・・・」
「それでいいのか?」
「生きてさえいれば、きっと会えるって思ってますから。」
だから。
「今は自分のやらなきゃいけないことをやらないと。」
「・・・分かった。」
加持さんは、それ以上何も言わなかった。
その夜。
僕は以前停電騒ぎが起こったときに使ったルートでケイジに向かっていた。
これも加持さんのアドバイスで。
なんでも、こういった裏道的なルートにはほとんど監視装置がないんだそうだ。
表の、いわゆる対使徒戦用の施設なんかの設備や補修で手一杯でこっちまで手が回らないとか。
どうも、ネルフってこういう細かいとこでいいかげんなんだよなぁ。
・・・まぁ、おかげで助かってるんだけどさ。
けど、今回のことが分かったら綾波は怒るだろうな、やっぱり。
そういえば、前にアスカのとこに泊まっちゃった時の綾波はこわかったっけ。
アレはやきもちだったのかな、やっぱり。
あの頃はそんなこと思いつきもしなかったけど。
・・・って、まずいな。
なんか、かなり後ろ髪引かれてる。
これしかないって分かってるはずなのに。
やっぱり、綾波と話さなかったのは正解だったかもしれない。
なんてことを考えてるうちにケイジにたどり着いたんだけど。
誰かがむこうから歩いてきて。
慌てて物陰に隠れて、様子をうかがってみると。
それはカヲル君だった。
カヲル君はゆっくりと零号機のところまで行きそこにしばらくたたずんでいた。
何をする気・・・ってそうか、前回は弐号機を操ってドグマに向かったんだっけ。
今回もそれを繰り返そうっていうのか。
使徒として殲滅されるために。
でも、それじゃ何の意味もないんだ。
「・・・カヲル君。」
声をかけて姿をあらわす。
「シンジ君、どうしてここに?」
「カヲル君こそ・・・また繰り返すの?」
「そうするしかないからね。」
カヲル君は普段と変わらない様子でそう答えた。
「仕方ないから惣流さんにでも頼もうと思っていたんだけれどね。」
そこで肩をすくめて。
「シンジ君が来てくれたのなら、やはり君に頼みたいな。」
カヲル君の気持ちは変わらず、か。
だったら有無を言わせずアダムを殲滅しよう。
それから話をすればいい。
だからとりあえずドグマの底へ行こう。
「・・・ここで?」
「それもそうだね。なら、あの場所へ行こうか?」
と、カヲル君のほうから提案してきてくれた。
そういえば、前回はあそこで・・・だったもんな。
「いいよ。」
「じゃあ、行こうか?」
「カヲル君は零号機で?」
「いや、シンジ君が一緒なら僕は一人でいいよ。」
「そういえば、前のときもそうだけどなんでエヴァを使おうとしたの?別に必要ないんじゃ・・・」
「いや、この体ではATフィールドを張るくらいしかできないしね?」
「そうなの?」
「身体的な能力は普通の人間と大して変わらないよ。だから、隔壁を壊したりの力仕事にはエヴァでないとね。」
「そ、そうなんだ・・・」
「まぁ、ほかにも理由はあるけれど・・・あんまりのんびりしていても邪魔が入るね。」
「そうだね。」
母さんに呼びかけて初号機に乗り込む。
「じゃあ、行こうか。」
カヲル君がふわりと宙に浮く。
その瞬間、警報があたりに響き渡った。
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