「それで、これからどうするの?」
綾波がポツリとつぶやいた。
「そんなの決まってるでしょうが。そこのアダムをちゃっちゃと殲滅して・・・ってその後が問題なのよね。コイツらをどうやってネルフの外に・・・」
「あ・・・アスカ。」
「ん、なに?なんかいいアイディアでもあんの?」
「そうじゃなくて・・・アレってアダムじゃないらしいんだけど。」
「へっ?」
「アレはリリス、いわゆる二番目の使徒だよ。」
カヲル君が補足してくれる。
「ちょ・・・ホントなの?」
ずいって弐号機がカヲル君に詰め寄る。
「ここで嘘をついたって仕方ないだろう?」
「それもそうよね・・・でも、それならアダムはどこにいるのよ?」
「僕にもはっきりとは分からないけどね。」
そこで軽く肩をすくめて。
「多分碇司令が持ってるんじゃないかな?」
「それ、どういうことさ?」
「彼からアダムの気配を感じる。前回は単なる残り香のようなものかと思って気にしなかったんだけど、こうなると・・・ね。」
「何、考えてるんだ、あの人は・・・」
「さぁね?」
カヲル君はもう一度肩をすくめた。
「ヒトの考えというものは本当によくわからないよ。まぁ、それはそれでいいと思い始めてもいるけれどね。」
「どっちにしろ、これじゃ仕切り直しよね。司令がアダムを持ってるっていうのも確実じゃないんでしょ?」
「そうだね、根拠は僕のカンに過ぎない。」
「ならあんたたちをいったん脱出させて・・・」
「いや、だめだよ。」
「シンジ?」
「もう一度ネルフに潜入するのはかなり厳しいと思う。だから、今何とかしないと・・・」
「そうは言っても・・・」
「隠れる場所なら心当たりがあるわ。」
「綾波?」
「それに、最近の碇司令はほとんど毎日ターミナルドグマに降りてるから。その時に確かめればいいわ。」
「なんかずいぶん協力的じゃない、ここに来るまであんだけぶつぶつ言ってたのに。」
アスカがからかいまじりの口調でそんなことを言うと。
「また無茶されるよりは・・・ましだもの。」
綾波は少しすねたようにつぶやいた。
・・・耳が痛い。
「と、とにかく。そういうことなら綾波に任せちゃっていいかな、カヲル君。」
「かまわないよ。」
「で、その隠れ場所ってどこなのよ?」
「・・・あそこ。」
綾波が指差した先はといえば・・・
「なにやら通路みたいなのがあるね。」
「キャットウォークってヤツ?」
「確かに盲点ではあるけれど・・・」
「って、ほんとにあんなところで大丈夫なの?」
「この部屋にはほとんど監視装置はないから。」
いや、そうあっさり言い切られても。
「平気なんじゃないかな?ここは誰でも来れるようなとこじゃないんだろう?」
「まぁ、あんなモノ置いてあったらね・・・って、あそこのアレはほっといて大丈夫なの?」
「ああ、そうだったね。」
と、言って。
カヲル君は軽く腕を振りながらリリスのほうを振り向いた。
・・・その線に沿って白い巨体が両断されたわけで。
「か、カヲル君?」
「・・・い、いきなりとんでもない事するわね。」
「リリスがサードインパクトに何らかの影響を及ぼすかもしれないからね。不安要素は少ないほうがいいだろう?」
「それはそうなのかもしれないけどさ・・・」
「ま、まぁ、それはそれとして、この状況をどうごまかすかよね・・・」
「ごまかすって?」
「ここで何が起こったか、なんてことを馬鹿正直に報告するわけにもいかないでしょーが?」
それは確かに。
「それに、碇君が彼と話しているところがケイジの監視カメラに残っていたわ。」
「使徒の片棒担いでるんじゃないかって意見も出たくらいなんだから。」
・・・う。
だけど、そう取られてもおかしくないだけのことはしてるか。
「一応、ミサトが抑えたけど・・・」
「まぁ、その辺は考えなくてもいいんじゃないかい?」
「どういうことよ。」
「君たちがここに来たら初号機を倒した僕がいた、ということにすればいい。」
「それで?」
「君が僕を殲滅した後で確認したけれど、シンジ君は初号機の中にはいなかった、という流れはどうかな?」
「シンジがどこに行ったんだってことにならない?」
「まぁ、エントリープラグを破壊して、シンジ君が死んだことにしてもいいけど・・・」
「そのほうがいいんじゃないかな?下手に行方不明とかにして捜索隊を出されても困るし。」
どうせ『ふり』なんだし、そこら辺は安心なやり方を取ったほうがいいと思う。
「で・・・と。結局のところ、アタシ達は何も知らないってスタンスを取れって事よね?」
「どうせ誰にも分からないんだからね。それほど手の込んだ話を作ることもないだろう?」
「ま、アンタ達が司令に会うまでごまかせればそれでいいんだもんね・・・オッケー、ならそれで行きましょ。ファーストもそれでいいわね?」
「・・・いいわ。」
その一瞬、綾波が僕に何か言いたそうな気配を感じたんだけど・・・
気のせいかな?
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